ラピスラズリ05

「ラピスラズリ:青金石(1)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


西暦1226の春、最後の年を過ごしていた聖フランチェスコに客がきた。
死が近くなると懐かしい人が来ると思っていた。
病状が悪化し、この日親友レオーネからサン・ダミアーノ女子修道院まで逢いに来てくださいと手紙が届いた。
姉妹キアラの若き青春の髪を断った事は記憶していた。
生けないという返事を後日キアラは受け取る、この秋に聖フランチェスコの亡骸がサン・ダミアーノ修道院を通りアッシジの街へ運ばれて行く。

「ラピスラズリ:青金石(2)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


若者が出した細工物を見て去年の秋に頼んだと思い出した。
聖書の文字を読めぬ者に状況を見せる木彫り人形と降誕祭の馬小屋でのちにヨーロッパに広がった。
若者は自分が病気で冬の間寝ていて遅れたと言った。
聖フランチェスコは長い日の懐かしさと共に若者の遅れを許した。
聖フランチェスコは次々に思い出をよみがえらせた。
若者は聖人の見たものは自分たちの見知っている事に似ていると言い、親から伝わっている口伝を話した。

「ラピスラズリ:青金石(3)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


「春に目覚めを告げる御使いを見る事があり、多くの者は一生に一度見るかどうかだが自分はこの春に見た。
死かたの再生、血液が循環するのを感じ野の朽ちた礼拝堂を見た。
最後に何か食べたか覚えておらず誰も答えず、天上の青、青金石の青。
天が裂け落ちてくる光に降りてくる天使を見た。」

「ラピスラズリ:青金石(4)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫



ラピスラズリの青、聖母の緋色、天上の花、説教をする聖人、小首をかしげた小鳥。
目覚めきらない春の空の1点で降りてくる天使。
これは秋の枯れ葉に始まる春の目覚めのものがたり。

このページの先頭へ