個別作品07

「初夏ものがたり 第2話:ワン・ペア」

1980:「オットーと魔術師」集英社文庫


18才のナオミは初夏に別荘のある岬に居て、商談相手を待っていた、膨大な権力と財力を持つ家の娘として。
タキ氏が現れ、ナオミと家族の事を知っているが、ナオミの希望に添えないと言った、ルール違反だからだった。
ナオミは1年前に亡くなった二卵性双生児の兄・ミサキとワンペアと思っていて、別の世界から呼ぶビジネスを知って要求した。
山荘へ移動して、タキ氏は第1のルール違反・依頼は別の世界からのみを説明したが、ナオミは聞き入れなかった。
タキ氏に電話があり、彼は兄が夜7時に来ると言ったが、第二のルール違反の説明はしなかった、それは12時までの時間制限だった。
ミサキが現れタキ氏と話し、ナオミに一緒に逃げられないと言い、自分はこのビジネスを知っていて1度だけ可能と知っていて、自身で利用したと言った。
そしてミサキが会いたいのは、ナオミではなく恋人だったと言い、タキ氏の依頼で時間のわずかをナオミに裂いたと言った。
この世の相手の記憶は消されるが、それ以外のナオミの記憶は残り、ナオミを苦しめた。


感想:タキ氏はそのビジネスを、この世から要求したルール違反のナオミに起きた事が描かれる。
ナオミが逢いたい兄・ミサキは誰と会いたかったのか、それを知らなかった。
何故、別の世界からしか依頼が出来ないのか理解していなかった。

「初夏ものがたり 第3話:通夜の客」

1980:「オットーと魔術師」集英社文庫


勲はベランダで老婦人を見かけ、それが日本に帰国した美濃夫人と気づいた。
勲の祖父の通夜であり、家は明治の洋館で老婦人と話しはじめたがもっと強い繋がりの予感があった。
他の親類が老婦人の噂をした、「族内婚」という、この一族では多く似た顔も多かった。
タキ氏が来て老婦人と話しはじめた、通夜に戻っても双子も多く久し振りでは誰か判らない人が多かった。
老婦人は誰にも打ち明けないつもりだった事を思いだしていた、タキ氏は年を取らず50年前の事は「神隠し」と言われた。
日本で「神隠し」にあい、欧州で結婚したが、50年前の事の意味を考えていた。
タキ氏が来た理由はあのビジネスだろうか、双子が3人に増える事だったのか。
勲は最後まで意味は判らなかった、老婦人にタキ氏はビジネスのトラブルと言ったが2度もビジネスに会った事は始めてだった。


感想:タキ氏のビジネスで始めて起きたトラブルだった。
1度しか出会わない筈のビジネスに2度会った、もしも本人が依頼者になると3度になる。
時を経て、双子や似た人物に会うことになった老婦人だった。

「初夏ものがたり 第4話:夏への一日」

1980:「オットーと魔術師」集英社文庫


6月の朝、娘がホテルを抜け出し、父のアパートに向かった。
タキ氏は電話で「2件のビジネスを同時に担当した事はない」と交渉していた。
ホテルを抜け出した娘の時間は特例で4日で、重なったために1日の行動は自由にした。
午後に荒原のハイウェイの電話ボックスでタキ氏が話しそこへヘリで老人が到着して、真夜中までの時間の延長を要求した。
どこかで特例の情報が漏れているようだが、記憶の削除で対応してタキ氏は老人とその未亡人との遺産の話を筆記した。
自由の娘は幾人かとごまかしながら接触していた。
遠く離れた所でタキ氏と似た服装の男が、そちらでは特例の情報は漏れていないが連日のビジネスの依頼が多すぎると苦情を電話していた。
翌朝、夜明け前にタキ氏は、娘のいるアパートを訪ねて、接触した人物の事を尋ねた。
2人は後始末の相談と行動を行ったが、タキ氏は特例は最後だろうと言い、娘は残りの日を新しい流行や映画を見たいと言いそんな依頼者は他にいないだろうと言った。
タキ氏はビジネスの使い方は自由だと言った。
とある場所で、同じ服装の人物が偶然に出会い、ビジネスが急に増えたと不満を語った。
タキ氏は新しいビジネスの電話を受けて、また2件重なると断りの交渉をし、そばで娘がまだかとせかした。


感想:どうやら、タキ氏のビジネスは大勢の中の1人の様だ。
そして、捌けない位に依頼が急増して、連日や2件重なる事が起きてしまった。
準備して、影響を最小限にする筈がそんな余裕がなくなった、普通の世界と同じ展開だ。

「繭」

1982/08:三一書房「夢の棲む街・遠近法」


霊魂の森にて、われら出逢う。


49日の籠城ののちに大火を背に一組の男女が黒い魂の森へのがれた。

王は若く、王族の快楽のなごりに沈み、瞼をよぎるのは血族達の往来で、まだ婚姻を望まない。
王は朝毎塔に登り、飢餓と疫病戦役を含む首都の俯瞰があり、秋を迎えた。
おびただしい水禽が飛来し群衆は撲殺したが尿臭があった。
49日目に炎上する首都と共に王も燃えつきた。
使者が来たが言葉も知らず遠国の蛮人らしからぬ美しさが驚かせた。
使者が去った後に、大門が急に閉ざされ多くが取り残された。
49日の籠城を支えたものは、王の不可解な驕りだった。
門外は、荒廃と永遠の孤独であった。
49日目の夜に火がはなたれて、籠城者は離散し、塔の窓に王の躰も燃えた。
一人の男と女が駆けて行く。

男は走り続け、女の面影とすすり泣く女の声が耳元をはなれなかった。
痩せた子供の涙と男は思った。
どこへゆくの。女が言い、いつしか歩いていた。
門の外に住む自分が助かり、籠城に加わるべき女の方が門外に残され見殺しにした。

あの女は理智を持っていて言葉を聞いたように思った。
今ならあの瞬間に戻ってゆけ、瞬間を見た事を、お前を愛したか忘れるか。
秋の野で眠気を男をとらえ膝も砕け、瞼は閉ざされた。
娘は一心に歩き、黒い森が遠望された。
娘は森の空地に出て、掌に繭を得た。
繭は人身大で数知れぬ群れが沈黙していた。
生命の気配があり、中に繭の眠る女を見た、あたしだ。

滅亡に浄められた夜に、霊魂の黒い森に到達したひとりの娘が涙を流した。
森の外は闇だった。


感想:作品集成には、「破壊王・第4部」として副題付きで掲載された。
初出の「夢の棲む街・遠近法」では新作短編として掲載された。
梗概的にはほぼ同一であり、文章や表現が書き直されています。
読む方が、「破壊王・第4部」として認識しなかっただけだ。

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