ラピスラズリ

「ラピスラズリ:銅版

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


私が3枚組の銅版画を見ていると画廊店主が話しかけてきた。
他の客には見逃されそうなものだった。
何故、深夜に画廊に入ったか判らないが、じっくり眺めていた。

1枚目の版画は、森の場面で秋だろう・2枚目は真冬の寝室で・最後は綠一色の幾何学庭園だった。

茫然とするほど眠たく、店主がいうタイトルと姿にある予感があった。
店主は冬眠者のものがたりと推測した。
店主は話し続け、私は眠気の頭で対応した。

操車場を見ながら冬眠者のその後が気になった。
同じ事を以前にも考えた気がした。
脱線事故だと騒ぐ人を見てもわたしは驚かなかった。
それを聞いた事を思いだし、これから母の葬儀におもむくために長距離列車に乗り込む事を思いだした。

5才の私は母の声を聞きながら壁に気をとられていた。
男が耳元に囁き、絵を見ようとするが母のてが目をふさぎ、やがて私の人形を奪い捨てる事になる。

次の絵は・・・。

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