個別作品08

「歪み真珠:ゴルゴンゾーラ大王あるいは草の冠」

2010:「歪み真珠」 国書刊行会


ゴルゴンゾーラ大王、蛙たちの王は臣民の苦難を聞き、苦慮した。
奇病で動けなくなる蛙たちは海外から、彼の国土にも広がりつつあった。
報告は火急を告げ、王自身も連日の見回りで疲労していた。
近づいて来たのは隣国の蛇の女王だった。

蛇の女王妖しくあでやかで、ゴルゴンゾーラ大王は文学趣味のある蛇の女王は苦手だった。
蛇の女王は助力を言い、大王は丸呑みにするのを控えるのが助力と答えると、他の動物も奇病を心配だと答えた。
大王が聞くと蛇の女王は夢見の丘で託宣を受けろと言うと、大王はその夜のうちに夢見の丘へ向かった。
夢見の丘は頂上の犠牲の岩で眠れば神託を受けられた、大王は着くと眠りについた。
夢に壺があらわれ回転し、壺の口を閉じよの声があったがそれは困難で呼吸さえ苦しくなった。

両生類が地上から消えてのち、荒れた宮殿に蛇の女王が来て小塚で「全ての壺の口を塞いだ働きはみごと、大王」と言った。
真実はツボカビが蛙に皮膚のケラチン質に感染し発症していた。
カビが増殖する時壺の様に口を開き遊走子を放出し、蛙を消滅させた。
カビが変異して暴走し、大王が壺の口を塞いだが押さえられなかった。
蛇の女王はさびしいがった。


感想: 「歪み真珠」は掌編小説集となっています。
短く、文章的にも読みやすく思います。
しかし、内容は作者特有の幻想世界が繰り広げられます。蛙のイメージはホラーか幻想どちら?。

「歪み真珠:美神の通過」

2010:「歪み真珠」 国書刊行会


エティンと呼ばれる荒野に美神が降臨する噂は乙女たちで熱心だった。
町の伊達男の噂は衰え男は噂が聞こえぬ風を装い、このはなしには男の影はほとんどない。
エティン荒野は単調な土地で何故に美神が降臨するか不審だが、大理石の台座に腰掛け移動する噂は地形的には納得できた。
女神に捧げる花籠を持った数人が連れて荒野に訪れ、心構えや服装や花は女神の好みにあわすとされたが、花は噂によって皆が従い、渡すのでなく通過にまき散らすものだった。
実際に女神の通過を見た者の噂は伝聞ばかりで主は不明で、その内に単調な荒野に飽きて何故その地に通過するのか、どうして美神だと判ったかとだれかが言い出した。
男が揶揄したのが混乱になり、一部の乙女が荒野に居座り、保護者の大人も乗り出しエティン荒野は賑わいを見せた。
荒野は日中は暑く介抱の年配の女が周囲を囲み、かれらが次第に湧き水にある野原に集結し、ひとりが唐突に女神と指さして叫んだ。
乙女たちの頭ごしに出現し、大量の雲や空の一角に女神の姿があり、倒れたじぶんがもがいたと思い出すと、突然の出現は不審で、大理石の台座から逃げた女たちで混乱が増した。
このなかで女神の顔は下からになり、記憶の映像は逆光でもあり美しいか考えるひまはなかった。
女たちにのしかかるように進んだのは台座の裏で、大理石の翼を見たものも触れる事も出来たと思ったのはあとだった。
別の角度から見た者には違った筈だが証言はまちまちで、不思議な事に後姿を見たものはいなく、女神が美神でないと断言出来る者はいなかった。
エティン荒野はひとが行かず忘れられ、今では成長した幼女がときおりやって来た。
通過が一瞬であったので記憶は永遠につづいた。


感想: 噂とか伝説とかが如何に生まれるか。
見たと言っても、実は何を見たかは判らない。
そもそも、何かを期待しているのだから、何も無かったとは終わらない。

「歪み真珠:娼婦たち、人魚でいっぱいの海」

2010:「歪み真珠」 国書刊行会


海は船と幾つかの古代都市をその底に沈めていると言われた。
このような場所で、海辺の娼婦通りが生き長らえてきた理由はわからないのだった。

船乗りたちは、死火山を見てその裾野の歓楽街を見るが、女たちの動作はぎごちなく手は冷たい。
多くの国と年代の船乗りは多くの風説を伝えて来た。
その噂で死火山を目指す船は多いが朽ちた桟橋と無人の廃屋を見た証言も折々にいた。

夜明け前に出港する乗員たちは話しの合間に昨夜の恐怖を思いだした。
女のぎごちない動きや目覚めない女は何者だったか。
遅く出る船の乗組員は普通の朝があったと言った。
賄い婦が残飯を海に投げたのを船から見た。

残飯に群れる人魚を見た者も折々いたが、口外しない者が多かった。

娼館には、海の劇場座・酪酊船・灰色海豹亭・女王海星の館・柄杓と北極星亭の名があった。
馴染みの客が、女が変わっていて、女がカード博打で館を取り合いもはや見分けが付かなくなっていた。

海の劇場座は中央で素人芝居舞台が売り物だった。
演目ははっきりせず、女将のいれかわりが曖昧にしていた。

身近に人魚の海があっても、帳場の女将たちに聞く者はなかった。
すべての館は地下通路で繋がり貨幣が埋もれている噂が関の山だった。

娼婦の昼も長く、海に向かうが泳ぎは禁止され、海に鏡を反射させた。
女たちは全身重装備で、糸で吊った鏡を海面まで垂らした。

人魚は哺乳類かという扇情本はロマンス本と同じくあり、図版は最後は男人魚で終わるが想像という解説があった。
ひとりの娼婦が正面の腹袋はただの物入れと言った。

浴槽付き風呂場はどの館・浴室も同じで、がらくたで溢れているのは浴室だくでなかったが、重心は陸地側で複数の説があった。
女たちは浴室の湯面の傾きに気づき、体まで傾いていると気づき、水平に戻った湯面の波紋を見ることもあった。

凪の季節で客が途絶えると女たちはぎごちなく、猿の群れが慰める噂があったが翌朝には記憶はあることはあった。
そもそもピアノ弾きがいないのに弾いていたのは誰かの疑念はあった。

荒れた土地という船乗りの噂も折々に言われた。
緊急の立ち寄り船がほとんどで、障害物や古代建物や女王娼婦と呼ばれた女たちの姿だった。

荒れた土地の背景画は普通の興行に使われず秘密興行の形跡との推測もあるが定かでない。

火山の噴火や、逃げる人間の人魚の撲殺の言い伝えは隠蔽され、祭りも廃れた。

大漁旗の船団は立ち寄る事はないが、湾の中央で立ち往生した船は多くの魚を放った。
雨のあとで虹が架かり、娼婦は衣類を捨て、船団からは飛び込む者がおり、湾は祝祭だった。
女たちと魚と人魚でいっぱいの海は、のちに風説となった。


感想:時代も場所も定かで無い。
伝説が産まれたかもしれない話しです。
そんなに長く詳しい、風説は実話より希かもしれない。

「歪み真珠:美しい背中のアタランテ」

2010:「歪み真珠」 国書刊行会


アルゴナウタイに参加できなかったアタランテは怒った。
出自のよい女は男社会でも大目に見られると雌熊がなだめた。
捨て子のアタランテを育てた事は獣ながら苦労した。
老いた雌熊は山へ戻った。
アタランテは気づき、王子の判断次第では乗組員に参加できた筈で、絶望を深めた。
割れた鏡は魔力を失い、怪力俊足は女には風変わりな特質で、このときからアタランテは走り続け地上に競争者は無かった。
アタランテの速さは男は後を追うだけで、顔を忘れられ、美しい背中が世界の中心に飛び込んでいく。


感想:特に短い作品です。
固有名詞の多様と擬人化で逆に引きつける。
主人公の一部しか判らない筈だが、充分判った気にもなります。

「歪み真珠:マスクとベルガマスク」

2010:「歪み真珠」 国書刊行会


マスクとベルガマスクは衣服交換の遊びを覚え、そうすれば見分けがつかなかった。
魔王クリンゾルの劇場が知る世界の全てで、美貌の双子舞台の花と呼ばれ真珠と呼ばれた。
鏡の悪魔セレストが守り役だった。
成長してますます相似が際立ち踊りは喝采を浴びた。
公爵夫妻がそれぞれ恋に落ち別居し、製粉業者の内儀が自殺し、クリンゾルの裁定が注目され、噂が広がった。
双子の片割れが追放された1年後に婚礼前夜の記念公演が始まり、セレストに花嫁となるベルガマスクが「追放は兄」とおうと「婚礼の夜にわかる」とう返事がかえった。
追放がどちらか町の噂は言い、もし帰るならクリンゾルが両方を得るとつもりとも言われた。
舞台は大仕掛けで永遠に思えたが、男装のベルガマスクが花嫁姿の歌姫を刺したと思うが別人の顔で大騒ぎになった。
クリンゾルの輪郭が水没し、逃れる双子を止める者はいなかった。
双子は五線譜のみちを辿り空白に出、「古い音楽のなかの登場人物」と言い、マスクの腕のなかでベルガマスクは息絶えた。。


感想:双子はいつも神秘さがあります。
花とも真珠とも呼ばれた双子になにがあったか。
断片的に描かれます。

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