ラピスラズリ04

「ラピスラズリ:トピアス(1)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


私は古い運河の地方の廃市で暮らし、何歳かも知らなかった。
地方の暮らしではじぶんが子供のままのような気がしていた。
おばあ様の通夜に遠方から集まった従姉妹たちは十四五歳の外見だった。
今では行方も知れなく記憶の中にだけにある少女たち。

「ラピスラズリ:トピアス(2)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


通夜が果てた後にたまきさんが寝なさいと言い、手に持っていた散弾銃は始めて見たが家を出る時の私は睡眠導入でまともに考えられない状態だった。
ただこの時の話やトビやラバードールの話もまだ早い。
にんげんの数が減ってもひとが死ねば葬儀が始まる。
光景は今と全然違うが。
通夜と葬儀に従姉妹が集まり以前同じに暮らしており興奮していた。
疎開だったがわたしだけが残った。
誰かがおばあ様の持ち物が誰のものになるか話し、人形部屋はおばあ様の在りようで誰もが滅多に入らなかった。
劣化した人形は気味が悪かった。

「ラピスラズリ:トピアス(3)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


山荘で見つかったのは加工用の苺で食べられなく、死んだトビを連想させラバードールを咥えたトビはたまきさんの犬で、拾った時に名前をつけた、トピアス。

仕出し屋の老人は女ばかりと言い通いのおばさんが追うまでしゃべっていた。
寮から町へは車道の他に近道があった。
町は店が遺れてゆき運河に海水が入り誰も住まなくなっていた。
今は閉じた古本屋の主人はマキノ氏といい、わたしに字の読みを教えてくれたが意味はわからなかったが認識出来る文字列はあった。

「ラピスラズリ:トピアス(4)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


可愛いしいがいた年を思い出す。
たまきさんは宗教画を描き、マキノ氏の店から来た安価な版画は雑然と貼られ「冬の花火」も中にあった。
わたしはたまきさんから料理を教わりはじめたが、それ以来しいとは会っていない。
通夜の夜明け、複雑な血縁関係は理解する気もなく<従姉妹>で済ませていた。
男がトビを蹴ってやってきた奥に行き、わたしは関係ない昔を思い出していた。
たまきさんがわたしを連れて逃げようとして、睡眠導入になったわたしは切れ切れにしか憶えていない。
目覚めて台所にはなにもなく季節の見当もつかなかった。
貧血で誰もいない山荘に放置されて空腹だった。
猟銃を持って秋の終わりに出ていったたまきさんと、わたしが山荘に放置されたかは今はわたしもおおよそわかっていた。
わたしが冬の途中で目覚めてしまったことや、色々なことがあったが、おばあ様の法要が7回忌13回忌と行われていた。

「ラピスラズリ:トピアス(5)

2003/09:「ラピスラズリ」国書刊行会
2012/01:「ラピスラズリ」ちくま文庫


まぼろしの光景が現実に化して浮かび、わたしがその日ジャムを食べた事はいのちの為で何も考える余裕もなく甘さと思い出に泣けた。

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