個別作品02
- 「ファンタジア領」
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1977:SFマガジン
1978:「夢の棲む街」早川文庫
2000:「山尾悠子作品集成」国書刊行会
part1 O氏と鍵番
住人が「城」呼ぶ会社で、O氏が暮らし始めた。彼は言葉を探していた。それが思い出せなかった。
鍵番が現れ、自分はあなたの妄想だという。次に未完成の「本」に言葉があるかも知れないという。
だが、最後に「本」ははじめから完成していて、改訂を試みていたが諦めたという。
part2 シャングリラ
土地は歳を取り過ぎ、王の「領内の時を封じ込めた「館」を探して時の構造を解け」という命令で使者が四方に旅だった。
伝説や占いをたよりに建物を見つけるが、誰もそれが「館」かどうかを知らない。まして、時の構造も知らない。
part3 星男
世の果てに近い所に星男が住んでいた。巨木があり、星の成る木と思っていたがまだ無かった。
地下に女がいた。星を持ってきたらいっしょになると言うが、星男は入手できない。待ち続けたがとうとう巨木も雷鳴で裂けた。
part 4 邂逅
鍵男と二人の女と少年が出会った。正体を了解しあうと「意味なんてものは、どこにもない」と言って踊りはじめた。
感想:何も知らない者どうしが意味も判らず暮らし、そして出会った。やはり「意味なんてものは、どこにもない」のだろうか。 それは、出会いが終わりという事かあるいは、出会いに意味がなかったのだろうか。
- 「堕天使」
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1977:かっぱマガジン
1980:「オットーと魔術師」集英社
2000:「山尾悠子作品集成」国書刊行会
Kは堕天使であり、マネージャーのセリから仕事をもらっていた。天使でも、人間でもなかった。
仕事先の社長は、魔術師や悪魔等を呼んだ事があり、今度は天使を呼んだつもりだった・・・本当は堕天使だが。
社長は、Kの背中にのりあちこちを飛ぶように命じた。Kが力つきるまで飛ばした。
Kは翌朝に、色々な所を飛び目撃されて体力も限界になったので、羽根が取れて人間になっていた。
Kが謝礼をもらいに行くと再度飛べという、だがもう人間になり飛べない。
社長は天使でなければ謝礼は払えないが、マネージャーがやり手の女で堕天使を廃物にした賠償を求めていると言った。
感想:天使の落ちこぼれの堕天使が、利用されて疲れて人間になった。天使で無くなったという事だろうか。元々、天使では無かったのか。
- 「耶路庭国異聞」
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1978:SFマガジン
2000:「山尾悠子作品集成」国書刊行会
大洪水で生き残った、1999人が「宇宙館」と呼ばれる建物に住んでいた。
それは幽閉ともいえた、「宇宙館」はガラスで出来ており夜は住居地域のみ照明があった。
夜の水族館に似ており、だれも照明のない外を調べようとせず、衣類も捨てた。
ある時に、「影」が「耶路庭」からやってきた。
「耶路庭」は疫病に冒されていた、皇帝の住む所に隧道がありそこに庭があり、それは宇宙の模型のようであった。
それのように、世界に果てがあるのかを調べるために、皇帝は100名の「影」を各方面に調べるために送った。
「宇宙館」に「影」は来たが、「宇宙館」がどのような状態にあるかは誰も知らなかった。
下に何があるのか、あるいは浮いて彷徨っているのか。そして、他の「影」たちが何と巡り会っているのか?、それは多くの 「宇宙館」かあるいは「耶路庭」かも知れない。
「耶路庭」では人は次々と死に空に現れた「影」は皇帝も疫病になった。「庭」は崩れはじめ、存在自体が無くなった。
ある時の朝に、「宇宙館」では2人ずつ愛しあったまま死んでいた。それを見届けた残りの1人は外に出ると馬がいた。
それに乗り進むと後を多くの馬が追ってくるように思った。そしてその姿はどこからか、蟻のように小さな存在の様に見られている気がした。
感想:宇宙とは何だろうか。入れ子のように無数に色々な大きさで存在するのか、あるいは同じものが複数あるのか。 それの一つが、終末を迎えると何かの影響があるのだろうか。
そもそも山尾作品は終末はあるが、始まりがあるのか不明だ。
- 「街の人名簿」
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1978:SFマガジン
2000:「山尾悠子作品集成」国書刊行会
Nさんの紹介で私は、M商会にアルバイトの面接にいった。
条件は良いが採用条件が難しいようだ。オーム値というものが、一定以上が必要らしい。
夜のアルバイトで昼は、街で普通に生活しているらしいが、実体は不明だ。
街にが色々な人々の生活があり、どれも普通であり、普通でない。
尾行者がいるらしい、誰もが誰かにつけられている・・そう気づく。
街をでて行く前に、招待状が届く。
そこはピアノがあり歌を歌っていたが、彼が歌い終わると・・・。
感想:部分部分は、普通の小説に見える。しかし、個々の内容は幾つかの不明な設定と、説明のない進行です。 それは、怪談のようでありあるいはホラー・怪奇に近いかもしれない。 幻想と怪奇の境目がまた、判らなくなる。
- 「巨人」
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1979:SFマガジン
2000:「山尾悠子作品集成」国書刊行会
「仲介人」は、「K」と言う商品を売りに各地を回っていた。Kを箍で出来るだけ小さくしていた。
Kは「山」の奥に潜む「巨人」族のひとりで、ひたすら見た事がない「海」を探していた。
「帝王」という買い手に会いにある街に着いたが「連絡員」は、帝王の配下となっており、「仲介人」を無視して巨人を帝王に見せると言う。
巨人が会い箍をはずし、大きくなって見せたのは連絡員がばけた偽帝王であり、唯一の鳥瞰する高さを望んだ。
仲介人が来て、偽帝王と知らせたが、本物の帝王と会うと別の巨人を持つらしい。
Kは、眠っているその女らしい巨人を起こして、海の事を聞こうとした。
しかし、帝王により別の巨人は箍で小さくされ、自身も眠りにつきた。
目覚めたKは、海を知りたい気持ちとその前に全ての物を食べ尽くしたい想いだった。
感想:巨人のイメージが掴みきれないもどかしさと共に、登場人物のいくつかの欲望は判りそうな気がします。 しかし、存在を知らなく言葉を知っている概念と共に、欲望の結果と行き着く先の有無は不明のままです。