個別作品06
- 「塔」
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1984:小説現代別冊
2000:「山尾悠子作品集成」国書刊行会
伽那子の夢は繰り返し、やがて暴走し、進む先は高圧線だった。
触れられない恐怖は、塔を見にゆく事になったが市街に無かった。
逃れるために地下街へゆくしかないが、いやな思い出があった、偽電車に乗せられた事だった。
歩道で少年と逢い短い恋愛があった。
数ヶ月後に郊外電車から高圧線を支える塔を見えた。
感想:夢に登場した高圧線の上空に逃げられない閉鎖感と、地下街の悪い思い出が閉じ込める。
そこで出会った少年との恋愛、そして郊外で漸く見た塔。少女は何を求めているのだろうか。
- 「天使論」
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1985:ショートショートランド
2000:「山尾悠子作品集成」国書刊行会
2010:「夢の遠近法 山尾悠子初期作品選」
麻也子は大学の正門からの光景には、七不思議という怪談があった。
Fとゼミで会い、Fは妹の話ばかりをした。
麻也子は幾つかに熱中したが、バルザックを訳していて両性具有の天使や畸形の天使のイメージが、ゼミの建物の光景に重なった。
そのころ、Fが階段を落ちて出血する事件があり、麻也子は居あわせなかった事を怒った。
その夜の明けばたに夢に青年の天使が来た。
麻也子は彼wの白衣の裾にしたたる血から思った、彼は女なのだ。
感想:山尾悠子は天使が好きなようだ。 ただ天使のイメージは、両性具有なのだろうか?。
- 「オットーと魔術師」
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1977:小説ジュニア
1980:「オットーと魔術師」集英社文庫
オットーが飼っている黒猫が病気になったが、猫は医者が嫌いだった。
アイコ・マリコたちが、花束とクッキーを持って見舞いにきて、魔術師に行けば良いと言った。
夜に魔術師の家を訪問すると集会の様で、三級魔術師から猫を使い魔にしている魔術師に間違われた。
女主人の魔術師が現れたが、留守中に離婚された小男の偽魔術師がマリコたちを騙して適当な媚薬入りクッキーを渡していた。
女魔術師と偽魔術師が争う中に、猫が暴れ込み電気が消え、騒ぎの中で猫はオットーに戻り逃げ出した。
館の屋根が割れて紙テープや切り紙が落ちて来たが、夜会に集まった女たちだった。
小男の偽魔術師は、マリコたちを背中にのせて空中を飛び、消えていった。
オットーと猫は。クッキーの効き目が判らないままに帰途についた。
感想:少女向けジュニア雑誌に書いた短編で文庫にまとめられた。 文体は判りやすく、ストーリーもジュニアを対象にしているが、猫・魔術師・媚薬・魔術・・と幻想そのものです。
しかし、伏線を増やして結末を強くして文体を変えると直ぐに100%の作者の世界になる。
- 「チョコレート人形」
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1978:小説ジュニア
1980:「オットーと魔術師」集英社文庫
天才科学者のノー氏は押しかけ婚約者きどりのきりえが苦手だった。
人形師のノエルがやってきて、2人で研究室に行き数才の子供の形のアンドロイドの首と体を繋げ始めた。
ノー氏は成功し、アンドロイドに「辰砂」と名をつけ、瞼を開くと「チョコレート食べたい」と言った。
2人は3年前からアンドロイドの完成にはげんで、ノー氏の理想のアンドロイドを完成させたが、同時に恋もした。
2人は辰砂を街に連れ出したが、きりえに見つかりレストランに連れ込まれたが、そこで辰砂は酒を飲み酔って暴れてしまった。
きりえにアンドロイドがばれた2人は、逃走をはかり、きりえに追われてサーカスに逃げ込んだ。
そこでノエル氏も辰砂に恋をしていると言ったが、辰砂はウィスキーボンボンを食べてしまいテントを壊しだした。
辰砂は皆を置いて、気球にのって大空に去っていった。
感想:マッドサイエンスとアンドロイドが登場します。 理想の姿に作られたアンドロイドに、科学者も人形師も恋をしてしまう。 チョコレートのみ食べるようにしたが、アルコールが頭脳を狂わすようだった。 判りやすい文体とストーリーだが、この作品も読者が自由に空想を広げられる。
- 「初夏ものがたり 第1話:オリーブ・トーマス」
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1980:「オットーと魔術師」集英社文庫
タキ氏が1週間ホテルに泊まっていて、ボーイ達は職業を知りたがった。
電話がかかって来て、ボーイが盗み聞いた言葉は「オリーブ・トーマス」だった。
翌日、7才の女の子「オリーブ・トーマス」と母親は街でタキ氏に会い、母親は1日だけの催眠をかけられ、タキ氏と女の子が車に乗った。
夕方に女の子に服等を買い、ヘリコプターで山荘に行った。
20才の夫が1回だけの、誕生日をすごす事を希望し、タキ氏はそのビジネスを行っていた。
時間が過ぎると全てが忘れられた。
女の子は成長して結婚式の時に、会った筈のない父の記憶がある気がした。
感想:不思議なビジネスと、時を隔てた記憶の不思議な関係が起きる。 多くの人が、記憶から消えてしまう1日というビジネスとは?。