江戸川乱歩作品の原作映画
- 江戸川乱歩の陰獣
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本格推理小説家・寒川光一郎(あおい輝彦)は作品の映画化で関西へ行き女優・宮島すみ子(倍賞美津子)に会い公演を行い、ファンで近づいた小山田静子(香山美子)に変格派推理小説家・大江春泥の住所を聞かれ、担当記者・本田達雄(若山富三郎)から執筆を要求された。
静子の夫・六郎(大友柳太朗)が運転手・青木民蔵(尾藤イサオ)と屋敷に帰り、ヘレン・クリスティ(田口久美)と植草河太郎(仲谷昇)と植草京子(野際陽子)に会った。
静子が寒川に初恋相手の春泥からの脅迫状を見せ、本名は平田一郎で六郎には隠していると言い、寒川は事件に興味を持った。
寒川と本田は写真の春泥を見つけるが静子は平田でないと言い、1月後に静子は寒川に家に春泥がいて見られていると言い天井裏を探るとボタンがあり、第2の脅迫状に夫・六郎殺害予告があった。
一銭蒸気の係員(藤岡琢也)と乗客(菅井きん)が隅田川船着場で六郎の死体を見つけ、通夜にヘレンが来た、後日ヘレンは尾行した寒川を誘い、マゾヒズムで六郎との関係があり、ヘレンの手袋のボタンが天井裏で見つけたものと同じで六郎が英国出張中に2人で買った。
<以下、隠し字>
本田は静岡で増田芙美子(加賀まりこ)から平田の過去を聞き、歌舞伎役者・市川荒丸(川津祐介)が殺され、自分が会った春泥と本田は言い、運転手・青木が六郎からボタンが欠けた昨年11月に貰った手袋が天井裏のものと同一で、天井は年末に洗われていた。
土蔵で静子に寒川は、脅迫状は六郎が書き静子を怖がらせていたが雨の日に窓から落ちて屋敷の忍び返しで背中を怪我し川におち下流に流され見つかったと言い、静子が春泥と春泥の妻を1人3役を演じていたと指摘し、寒川は現実の春泥に操られたと言い、・・・。
監督:加藤泰
脚本:加藤泰・仲倉重郎
原作:江戸川乱歩
出演者:あおい輝彦・香山美子・大友柳太朗・川津祐介・中山仁・仲谷昇・野際陽子・田口久美・加賀まりこ・尾藤イサオ・任田順好・若山富三郎・藤岡琢也・菅井きん・松村鈴子・倍賞美津子・花柳幻舟
制作年:1977年
感想: 乱歩の映像化では原作に近い。
本格好きと変格作家とは乱歩自身の姿で、春泥は乱歩を思われる。
物証が弱いが本格味は強い。
- 人間椅子
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昭和初期、人気女流作家の篠崎佳子(清水美砂)は、夫・清水昭一郎(國村隼)と何不自由ない生活を送っていたが、異常な潔癖症で執筆も手袋を用い、夫との性交渉も出来なかった。
ある日、彼女の一通の封書が届き、匿名の家具職人(山路和弘)が自ら作った椅子の中に入って、言いしれぬ喜びにひたっている告白文であった。
佳子は日々の手紙を読むうち奇異な世界に夢中になった。
自分が座っている椅子が過去にその椅子と知り、男への興味をもった。
会いたいという男の願いで会う決心をした佳子は、赴き男と肌を重ねた。
男は自分は醜いからと、佳子に目隠しして顔を見せなく、触覚だけの行為に彼女は陶酔を覚えた。
<以下、隠し字>
佳子はついに男との駆け落ちを考えたが、男は昭一郎で妻の潔癖症を治すための創作だった。
佳子はショックだったが、自らの目を傷つけて自分を愛してくれる夫の気持ちを知り、一緒に暮らしていこうと思った。
監督:水谷俊之
脚本:水谷俊之
原作:江戸川乱歩
出演:清水美砂・國村隼・山路和弘
制作年:1997年
感想: 殆どが妄想の想像の場面という、不思議なストーリーになっている。
常識的な解決を越えた、盲目の愛で終わる事は、それも妄想にも思える。
- 屋根裏の散歩者
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1920年代の東京の遊民宿・東栄館に住む郷田三郎(三上博史)は退屈な日を送っていたが、ある日押入れから屋根裏に上り、徘徊を始めた。
天井の節穴を通して、バイオリンを弾く・秋月ひろこ(宮崎萬純)や、妾の魚谷和枝(清水ひとみ)を荒縄で縛りそれを描く弁護士・越塚恵蔵(寺田農)、複数の男と共にする新庄奈々子(加賀恵子)、下宿人の部屋から小銭を盗む女中・崎村珠代(鈴木奈緒)など、様々な下宿人たちの姿が見え、郷田は日常と異なる本性を見る楽しみを覚えた。
彼はそれにもすぐに飽き、女との心中話を自慢する歯科医・遠藤幹彦(六平直政)が眠っている時、その大口にモルヒネの溶液を垂らすという犯罪を思い立ち偶然の機会に実行した。
遠藤は死ぬが、郷田は動揺のあまりモルヒネの瓶を遠藤の部屋に残すのを忘れ、再び屋根裏へ行った。
瓶を落とした時、突然遠藤の目覚まし時計が鳴り郷田は慌てて部屋に戻った。
<以下、隠し字>
密室に見えて事件は自殺となったが、同じ下宿の一階に住む明智小五郎(嶋田久作)だけが、自殺する人間が目覚まし時計をセットするはずがないと疑問を抱いた。
明智は郷田が事件以来パッタリと煙草を吸わなくなったのもヒントとなり、屋根裏のからくりと彼の犯罪に気づいた。
だがそれを警察に告げるのは彼の興味の中にはなかった。
明智に真相を暴かれた郷田は、ただ呆然と煙草をくゆらすのであった。
監督:実相寺昭雄
脚本:薩川昭夫
原作:江戸川乱歩
出演:三上博史・宮崎萬純・六平直政・加賀恵子・嶋田久作・寺田農・鈴木奈緒・清水ひとみ
制作年:1992年
感想: 偶然に可能な犯罪と、日本家屋の構造は密室でないという小説に、特異な性格の人物を配した。
全体に、宿の住人はすべてどこか変であり、見ていると慣らされるかもしれないが、やはり異常な話ばかりです。
全てが妄想の世界です。
- 一寸法師
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記事を書くために文士・小林章三(宇津井健)は飲み屋街に来ていたが、飛び出した一寸法師(和久井勉)で何か書けそうと思い後をつけたが養源寺の門前で姿を消した。
翌日章三はバラバラ事件を聞き養源寺で和尚に会い、そこで学生時代の恋人で現在山野証券社長夫人・百合枝(三浦光子)に会い、山野(三島雅夫)の先妻の娘・三千子(安西郷子)が5日前から行方不明と聞き、百合枝に章三は私立探偵・旗龍作(二本柳寛)を紹介して三千子の捜索を頼み、山野邸で旗はピアノから髪毛を見つけ、書生・山木(鮎川浩)や女中・お雪(野上千鶴子)やお君(小沢路子)はゴミ集めを思い出し、病気の小間使・小松(安西郷子)に聞くが頭痛を訴えた。
翌日にファッションショーの人形の片腕が人間の腕に替えられ、旗は部屋で三千子の指紋を取り腕と同じで殺されたと言い、山野家の運転手・蕗屋(国方伝)は小松と恋愛関係だが最近に三千子と愛し合い、百合枝に来た脅迫状を知った。
百合枝は出かけお雪が追い、小松が家を出て、百合枝は指定場所で覆面の大男に会い車で連れられしもたやに入り、お雪が見て連絡し章三が馳けつけ、男は百合枝に想いを言いそれは一寸法師の変装した姿で、百合枝の悲鳴に章三が馳けつけると姿を消し、しもたやの老婆(五月藤江)に追い出されたが百合枝は何も語らなかった。
章三は旗の助手・平田(天知茂)に会い、旗から脅迫状を聞き、百合枝の部屋から三千子が家出時身につけていたマフラーとハイヒールと石膏像の部分も見つかったと言い、小松や北島という容疑者もいると言い、助手・斎藤(村上京司)が蕗屋を尾行すると小松と会った。
<以下、隠し字>
田村検事(細川俊夫)が百合枝を調べると山野がアリバイを言い、百合枝は一寸法師に呼び出され、平田が一寸法師を尾行し突き止め、旗は章三に養源寺としもたやとマネキン屋が裏で繋がると言い養源寺らに行き調べ、和尚が百合枝に迫り旗らが踏み込むと衣を脱いだ一寸法師に会い警察が追い、章三が百合枝を助けると三千子を殺したと言い家に帰ると言い、その後に本当は山野が三千子を殺したと言い、帰ると山野が病死していた。
旗は山野は犯人でなく、小松を姉・三千子が殺し山野とピアノに隠し、三千子が小松になりすまし、遺体を養源寺に運び一寸法師が百合枝を脅迫し、三千子は蕗屋と逃げたがばれて殺され、旗は蕗屋に殺された小松が墓地に埋められていると言い、一寸法師が瀕死で捕らわれ百合枝に会うのを望み謝り死んだ。
監督:内川清一郎
脚本:館岡謙之助
原作:江戸川乱歩
出演者:二本柳寛・宇津井健・三島雅夫・三浦光子・安西郷子・鮎川浩・国方伝・野上千鶴子・小沢路子・五月藤江・天知茂・村上京司・細川俊夫・和久井勉
製作年:1955年
感想: モノクロ映画。
隠し事が多いサスペンスだ。
古い捜査でのみ成り立つ。
- 押繪と旅する男
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大正時代に元木邦晴少年(藤田哲也)が兄・昌康(飴屋法水)にもらった時計を見ていると姉嫁・百代(鷲尾いさ子)が兄の所へつれて行って欲しいと言った。
現在の東京でひとり暮らしの邦晴老人(浜村純)は戦時中に特高で恨みをかったが犠牲者に会っても判らなく、浅草寺の凌雲閣を見つけて屋上から兄を探した。
少年邦晴は兄が望遠鏡を手に入れて夢中と知っていた、兄はそれで街を覗いていたが魚津の蜃気楼を見たがった。
兄は百代と祝言し、邦晴は度々百代から兄の行く先を聞かれた。
邦晴少年は老人の夢を度々見た、父の死に際に兄が行方不明で探すと望遠鏡に夢中だった。
邦晴少年は兄を覗きからくり小屋で見かけ、兄は探していた女性をからくりの中に見つけ、その押し絵の男になりたいと言い2人でからくりを壊して絵を奪った。
兄に望遠鏡を逆にして見るようにいわれ、見ると兄は押し絵の中に入った。
1月後に邦晴少年は兄のいる押し絵に蜃気楼を見せると言った。
目覚めた邦晴老人は、列車の向かいに兄を見つけ逆の生き方をしたとあやまるが兄は気にしなく消えた。
<以下、隠し字>
邦晴少年と百代は蜃気楼を見に魚津に向かっていた、魚津の宿で邦晴少年は兄が入った押し絵を百代に見せたが嫉妬と愛情で泣き出した。
翌朝、百代は置き手紙を残し去り、山寺で押絵を住職にたくした邦晴少年は邦晴老人に出会った。
蜃気楼の出現合図のサイレンが鳴り、砂丘で邦晴少年・邦晴老人・百代・昌康が茫然と蜃気楼を見ていた。
監督:川島透
脚本:薩川昭夫・川島透
原作:江戸川乱歩
出演:浜村純・鷲尾いさ子・藤田哲也・天本英世
制作年:1992年
感想: 幻想的な短編原作をオリジナルの長編で描いた。
登場人物が皆、人が押し絵に入る事を自然に受け入れる事が、逆に当然の様に感じる内容に描かれている。
現実の世界から離れた登場人物達が逆に普通に感じる。
- RAMPO 奥山監督バージョン
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昭和初期、作家江戸川乱歩(竹中直人)は、発禁処分や怪人二十面相の映画のできばえに不満で落ち込んでいた。
乱歩は雑誌編集長・横溝正史(香川照之)からの新聞記事で発禁処分の「お勢登場」のヒロインとそっくりの境遇の女・静子(羽田美智子)を知った。
彼女に魅了された乱歩は、夫殺しを非難され街を離れたい静子を説得し、「お勢登場」の続編が書き上がるまで近くにいてほしいと言った。
その続編は、乱歩の分身である明智小五郎(本木雅弘)が、変態・大河原侯爵(平幹次朗)のもとから虚構の静子を救い出す物語であったが、筆は滞った。
その上分身であるはずの明智の指図は受けないという言葉が彼を混乱させた。
一方、現実の静子は書き置きを残し、乱歩のもとを去っていった。
<以下、隠し字>
彼女はいつしか彼の小説の中に入り込んでしまっていた。
静子を求め、乱歩は小説の迷宮に自ら足を踏み入れる。
だが乱歩の小説の中で変態侯爵大河原の妻となっていた静子は、大河原を殺し、明智を長持ちの中に閉じ込めている間に毒を含んで死んだ。
監督:奥山和由
脚本:奥山和由・榎祐平・黛りんたろう
原作:江戸川乱歩
出演:本木雅弘・竹中直人・羽田美智子・香川照之・平幹次朗
制作年:1994年
感想: 現実と小説と、妄想が重なります。
現実はなにかが、わからなくなります。
現実とされている事自体が、映画の虚像の世界です。