鑑賞日記(2016/02)
- もどり川
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歌人・苑田岳葉(萩原健一)は浅草・十二階下の遊廓の千恵(池波志乃)に来て、妻・ミネ(藤真利子)が岳葉を外で待ち社会主義運動家・加藤(柴俊夫)に会い、ミネは胸を煩い吐血し、岳葉は村上秋峯(米倉斉加年)の妻・琴江(樋口可南子)と踊ろうとし歌風で秋峯に対立した岳葉は琴江に言い寄り、岳葉は歌に毒が無いと秋峯に破門され、琴江に言い寄り夜に強引に忍び込み関係を持ち、琴江は秋峯に手紙で伝え岳葉は駈け落ちの約束は歌を作る為言い、岳葉は姦通罪で刑務所に送られミネが接見した。
刑期を終え岳葉は琴江が十二階下に居る噂で出かけ、そこで関東大震災に遇い混乱のなかで岳葉はミネを療養所に入れ、岳葉は琴江を探すが彼女は娼婦になり岳葉を用があるなら買えと突き放し、家中に歌を落書きし首を吊ろうとした岳葉を、ファンという音楽学校生・文緒(蜷川有紀)が止めバイオリンを弾いた。
岳葉は文緒に忘れたバイオリンを届け、文緒は銀行頭取・桂木(高橋昌也)の令嬢で、姉・綾乃(加賀まりこ)が京都へ演奏旅行で会わすと言い、旅館で岳葉と文緒が会い岳葉から心中を持ちかけ桂川の宿を教えた、岳葉は手紙を出し琴江を待つが返事は来ず、再度出し文緒が来てひたすら抱き合い情事に溺れ、船で心中を睡眠薬で図るが未遂に終わり、それを詠った桂川情歌で岳葉は有名になり心中が流行した。
厳重な管理下で自分が見替わりと気づいた文緒は自殺し、ミネを見舞った療養所で、岳葉はもと詩人の加藤とその妻・朱子(原田美枝子)と知り合い、加藤は胸を煩い大杉栄の死後に過激になり、加藤は爆弾を持ち歩き朱子と会うが警官に見つかり爆死し、岳葉は朱子に心中をもちかけ、琴江に岳葉は愛を受け入れ無かったから多数死んだと旅館を伝え心中を持ち掛け、岳葉に琴江が旅館に来て岳葉が部屋と花等を指定し、朱子は岳葉に文緒の事を聞き身代わりかと聞き、岳葉は琴江を駅に向かえた。
<以下、隠し字>
朱子は岳葉のノート「甦生」を見つけそこに心中が未遂に終わりそれを詠った歌が書かれていた、岳葉と琴江は情事にふけり、船で川へ出た岳葉と朱子は薬を飲み朱子はノートを見たと告げ芝居で薬を替えたと言い、岳葉は歌の為に何でも行ったが筋書きが変わると言い、昏睡状態の岳葉を死んだ思った朱子は手首を切った。
刑事が助かった岳葉に相手が死んだと言い殺人の疑いを述べ、もどり川で岸に戻り助かったと言うと、琴江の死体があがったという知らせがあり聞いた岳葉は自らも命を断った、ミネは岳葉の遺体の引取を断った。
監督:神代辰巳
脚本:荒井晴彦
原作:連城三紀彦
出演者:萩原健一・原田美枝子・藤真利子・樋口可南子・蜷川有紀・池波志乃・高橋昌也・柴俊夫・加賀まりこ・米倉斉加年
製作年:1983年
感想: 「甦生」の歌集の意味とその創作過程がどの程度伝わるか。
ラストの年表は、最初では無理だろうか。
もどり川もおまけに見えるのは厳しい。
(2016/02/10)
- 日本の黒い夏 冤罪
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1995年初夏、松本市で高校放送部の島尾エミ(遠野凪子)とヒロ(斉藤亮太)は、1年前の「松本サリン事件」冤罪報道を検証するドキュメンタリー・ヴィデオを制作企画で、地元のローカル・テレビ局を訪れた。
この放送局以外どこも協力的ではなく、報道部長・笹野誠(中井貴一)と記者・花沢圭子(細川直美)と浅川浩司(北村有起哉)と野田太郎(加藤隆之)がふたりのインタビューに答え、彼らは事件当時の取材を回想した。
有毒ガス事件で翌日警察は事件の被害者で第1通報者の神部俊夫(寺尾聰)の自宅を容疑者不詳の殺人容疑で家宅捜査し数種類の薬品を押収し青酸カリが見つかり、神部が薬品の調合ミスで有毒ガスを発生させたの見解を示した情報が東京から入った。
笹野の裏付け取り指示で浅川は吉田警部(石橋蓮司)から裏が取れず配信せず、翌朝新聞各社は裏が取れてないが、警察情報として神部が犯人であるかの報道を開始し、笹野は新聞社が裏を取ったと思った。
笹野の部下に大出女医(根岸季衣)に取材すると青酸カリが原因でなかったが、上司の圧力で笹野は裏が取れなく事件の解決とは無関係としたが、長野県は情報封鎖で東京の憶測記事が流された。
神部は重傷だが警察聴取が行われ、神部は永田威雄(北村和夫)を弁護士にし、進行はなくやがて有毒ガスはサリンと判明したがサリンはサラリーマンが作れるものでない化学兵器で、藤島教授(藤村俊二)はサリンは容易に作れるとし、吉田警部も浅川に合成してサリンは作れると言うがその元の薬品が問題だった。
神部は意識不明の妻(二木てるみ)と面会し自分も幻覚幻聴があり、退院後に永田弁護士と記者会見し何故自分が容疑者になったか怒りを訴え、浅川は約束の時間を過ぎても終わらない聴取で逮捕を予測したが、吉田警部は上司の指示で強引な聴取を進め、エミは報道姿勢を批判するが浅川は時間がなく、花沢は聴取内容は後で判ったと言い、笹野は何も言わなかった。
神部や家族への嫌がらせが酷くなり、神部は子供(反田孝幸・皆川香澄・児玉真菜)に逃げないと言い、笹野は永田弁護士に会い逮捕阻止は世論だがマスコミの報道の根拠がないと語り笹野は特番製作の指導を頼み、笹野はサリン中心の特番を計画したが、藤島教授のコメントが間違いで花沢は古屋教授(岩崎加根子)から複数の専門家で漸くサリンの扱いが可能で、古屋教授を含めて前後の状況を調べ、押収薬品リストにはサリン合成の出発物質はなかった。
<以下、隠し字>
笹野はエミの質問に視聴率を上げるため警察と異なる内容を放送し、結果は神部が犯人と思いこまされていた世論の反発を受けた。
エミは謝るべきと言い浅川は反発し、笹野ははじめて当時に社内会議でスポンサーや小田営業部長(平田満)の批判に対し報道態度が変えられないと答え、吉田警部に自信を確かめに会い容疑者とは一度も言っていないと聞き、吉田警部はあるカルト集団とサリン製作の事実が判ったが上層部はメンツのみで意見を変えようとしないと言った。
結局警察は神部逮捕出来ず、翌年3月に東京で地下鉄サリン事件が発生しカルト集団の捜査で神部の無罪が出て新聞は謝罪記事を載せ始めた。
話を聞きエミはマスコミに幻滅し、浅川はそれが現実で、笹野は若い受け手で報道を受け取る事を期待していると言った。
そこへカルト集団がサリン事件の犯行を認めたとの配信が届き、神部の無罪がはっきりして、エミは浅川に謝り、浅川は初めて本音を語りあったと答え、笹野の指示で手分けして松本市と裁判所をターゲットにした犯罪計画を検証ニュース報道した。
エミと笹野らは容疑の晴れた神部の特番制作依頼し、笹野は反省の意味と言い、神部は吉田警部の謝罪で気が晴れ、特番で人間の善悪の両面を見て妻と共有時間が大切と思うと言い、神部の特番は反響を呼んだ。
監督:熊井啓
脚本協力:池田太郎
脚本:熊井啓
原作:平石耕一
出演者:中井貴一・石橋蓮司・細川直美・遠野凪子・北村有起哉・加藤隆之・根岸季衣・岩崎加根子・二木てるみ・斉藤亮太・北村和夫・藤村俊二・反田孝幸・皆川香澄・児玉真菜・平田満
製作年:2000年
感想: 松本サリン事件を報道の眼から見る。
同時に如何に冤罪が作られるかもテーマだ。
本音で出来ない事が事実を歪めるが、それを気づかない。
(2016/02/10)
- 豚と軍艦
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米海軍基地は軍艦が入ると水兵相手のキャバレーの中心ドブ板通りは活気を持ったが、当局の取締りでモグリ売春ハウスの日森(三島雅夫)一家は困っていた。
日森一家は、豚の飼育を考えハワイの崎山(山内明)が基地の残飯を提供し、あらゆる手段で金をつくりメドがつき始めた。
星野(大坂志郎)が勝代(南田洋子)と鉄次(丹波哲郎)に声をかけ、矢島(西村晃)を脅していると、流れやくざの春駒(加原武門)がタカリに来て、チンピラの欣太(長門裕之)は恋人・春子(吉村実子)と暮したく、星野の春駒処理を手伝い親分の代人になれと言われた。
豚のえさ代の値上げに日森一家は困り、欣太は矢島と妻・つね(初井言栄)に要求し皆が走り廻り、春子は欣太の子をおろし宮口医師(高原駿雄)から多めの費用を要求され、欣太は春子から体裁にかまうと言われ、春駒の死体が港に浮かび貫市(東野英治郎)から聞いた欣太は鉄次に知らせ、警官(玉村駿太郎)から隠した。
勝代を春子が手伝い、警官(河上信夫)が春駒の張り紙を持ってきて、春子は欣太に地道に生きようと言い、春子の家は姉・弘美(中原早苗)の外人相手で左うちわだが母・ふみ(菅井きん)や婆さん(武智豊子)には春子は反対で、鉄次は欣太を責めるが欣太が代人の話を言うと星野を叱り、欣太は春子の言葉を無視し貫市に春子は判らなくなったと言った。
鉄次らが麻雀をしていると、豚を食った一家の連中は春駒の死体を豚に食わせたと聞き、鉄次は血を吐き菊夫(佐藤英夫)は欣太に無茶をするからと言った。
鉄次はひどい胃癌で欣太から3日もたないと聞き、春子は弘美の誘いも菊夫の助けも断り欣太に辛くあたり春子は町で遊び酔い水兵に遊ばれた、欣太から聞いた鉄次は殺し屋の王(城所英夫)に自分の殺しを頼んだ。
<以下、隠し字>
欣太は春子が遊ばれ薬で捕まったと聞き、弘美らが欣太が頼りないと言った。
星野が金一人占めし、崎山は陳(殿山泰司)と残飯代を前金で取るとハワイに逃げ、日森一家は組長と、軍治(小沢昭一)・大八(加藤武)とに分裂し、欣太は春子にヤクザを止めると言ったが、両者は豚を売ろうとし軍治らは豚の運搬を欣太に命じた。
鉄次は胃潰瘍で、菊夫と弘美から写真の間違いと聞いた。
欣太は豚を積み込み中に日森らにつかまり豚をのせ走り出したが、追う軍治らのトラックで両者は話し合うが、欣太は約束が違うと知り小型機関銃を撃ち、鉄次は王に狙われ、ドブ板通りに豚の大群があふれ皆が豚の暴走に踏みつぶされた。
ふみと婆さんが駅で待つが、欣太は死に春子は噂を聞いてドブ板通りに戻り欣太の死体を見つけ・・・・。
数日後、春子は家出し・・・・・・。
監督:今村昌平
脚本:山内久
出演者:長門裕之・吉村実子・丹波哲郎・大坂志郎・加藤武・小沢昭一・南田洋子・東野英治郎・山内明・中原早苗・武智豊子・加原武門・菅井きん・西村晃・初井言栄・高原駿雄・佐藤英夫・殿山泰司・城所英夫・玉村駿太郎・河上信夫
製作年:1961年
感想: モノクロ。
戦後の米軍海軍基地では、色々な事があった。
そこでも、うまくやれる者と駄目な者が入り交じっていた。
人を信じる者も相手を正しく見れなければ、地道にしか生きられなかった。
(2016/02/20)
- カリスマ
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薮池五郎刑事(役所広司)は、代議士を人質に立て籠もる事件が両方の死の結果になり、上司(塩野谷正幸)に休暇を取らされた薮池は、犯人の「世界の法則を回復せよ」の謎のメッセージに導かれ森へ行った。
森には「カリスマ」と呼ばれる奇妙な木が生え根からの毒素で周りの木々を倒す力を持ち植林作業員・中曽根敏(大杉漣)らは他の木を守る為にカリスマ伐採をするが、坪井(大鷹明良)は写真を取り私有地と警告するが薮池は森に入りきのこを見つけた。
薮池は森に住む桐山直人(池内博之)に会い「強いもの勝つ」と考えカリスマを守り、森には植物研究学者の神保美津子(風吹ジュン)と妹・千鶴(洞口依子)がいて、薮池は生命が競い合う場所で意外で、千鶴は自分が薮池を選んだと言い、美津子は森を一度完全に破壊しようと池に毒を撒いていた。
中曽根らのカリスマ伐採を桐山が妨害し喧嘩になるが薮池が止め、どちらの見方でもないと言い、病院で華子(目黒幸子)から桐山を開放しようと言われた。
美津子は誰も森全体を考えないと言い、カリスマは亡き院長が持ち込んだ木で危険な存在だが不思議なのは他の植物が拒絶せず若い内に倒れる事で両方は生かせないと言った。
薮池は桐山・中曽根・美津子から仲間に呼ばれ異なる意見を聞いた。
<以下、隠し字>
坪井の写真で中曽根に猫島(松重豊)・西(戸田昌弘)・杉下(田中要次)らプラントハンターが来てカリスマは抜かれ奪い合いが行われ、焼かれた。
薮池は森の奥に巨大な木を見つけカリスマと思うが、違うという桐山と、只の枯木という美津子、その木を買おうとする猫島ら、猫島の部下を襲う作業員(川屋せっちん・三浦景虎・ジーコ内山)たち、森を彷徨う中曽根と坪井、桐山に殺される千鶴、事件が起きて行く。
美津子は巨大な木を爆破しようとし見ていた薮池は拳銃で爆発させ、新しい芽を発見したが猫島が美津子を人質に奪おうとし、拳銃で猫島を怪我させ芽を美津子に任せた薮池は、森を出ていった。
監督:黒沢清
脚本:黒沢清
出演者:役所広司・池内博之・風吹ジュン・洞口依子・大杉漣・松重豊・大鷹明良・塩野谷正幸・ジーコ内山・三浦景虎・川屋せっちん・目黒幸子・戸田昌弘・田中要次
製作年:1999年
感想: 森全体か、特別な一本の木か。
どちらかを助ける事は出来るのか。
問題自体を理解する事は出来るのか。
(2016/02/20)