鑑賞日記(2013/01)
- 海は見ていた
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江戸・深川の岡場所「葦の家」の若い娼婦・お新(遠野凪子)は、女将・おみね(野川由美子)や姐御肌の菊乃(清水美砂)らから「客に惚れてはいけない」と遊女の掟を教えられていたが、刃傷沙汰で勘当され彼女に通う房之助(吉岡秀隆)の言葉に想いを寄せ、お新も他の娼婦・お吉(つみきみほ)やおその(河合美智子)らは勝手に房之助がお新との結婚を考えていると思った。
菊乃は隠居・善兵衛(石橋蓮司)が馴染みだったが一緒になろうとしなかった。
勘当を解かれて来た房之助は、別の女性との婚礼をお新に告げ、勘当の辛さを忘れる為にお新に通っていただけと言った。
絶望でお新は寝込み、女将・おみねも患い湯治に行き店は菊乃が任されていたが、漸くお新が店に出始めた。
祭りの日に、お新は謎のある青年・良介(永瀬正敏)を見かけ、後で店に現れお新は良介の不幸な生い立ちを知り励ますが、また客の良介に惚れてしまった。
菊乃(清水美砂)のヒモ・銀次(奥田瑛二)が度々来るが菊乃は相手にしないが、善兵衛がみうけを誘うのを聞き、菊乃を襲い痛めた。
夏のある日、深川を台風が襲い激しい雷雨から、川の氾濫が始まり高潮が押し寄せて来て、外へ逃げ始める者が増えて来て菊乃とお新以外は逃げた。
嵐の中で良介と2人がいると銀次が訪れ、菊乃から店の金を奪おうとしたが良介が止めにはいり、雨風のなかで銀次を殺害した。
自訴するという良介を菊乃とお新は説得して上方に逃がした。
<以下、隠し字>
海から水が増えて、逃げそびれた菊乃とお新は屋根へ避難したが、逃げた筈の良介がふたりを助けにぼろ舟で引き返して来た。
ぼろ舟にはふたりしか乗れず、残ると決めた菊乃はお新がとうとう本者に恋したと言ってふたりを見送った。
監督:熊井啓
脚本:黒澤明
原作:山本周五郎
出演者:清水美砂・遠野凪子・永瀬正敏・吉岡秀隆・奥田瑛二・野川由美子・つみきみほ・河合美智子・石橋蓮司
制作年:2002年
感想: 惚れっぽい娼婦が懲りずに客に惚れて挫折するがついに、出会う。
他方で経験の深い姐娼婦はヒモにゆすられながら、隠居の馴染めがいる。
そんな娼婦たちを嵐が襲うが、全てを海は見ていた。
(2013/01/04)
- 砂の器
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警視庁・今西栄太郎刑事(丹波哲郎)と、西蒲田署・吉村正刑事(森田健作)が羽後亀田駅に来て、署長(山谷初男)に会い行方不明人物を調べ始めたが東北弁の「カメダ」のみが手掛かりで収穫はなかった。
国鉄蒲田操車場構内で死体が発見、被害者の年齢は60-65歳だが身許が分らず、遺留品のマッチ箱から聞込みで前夜蒲田駅前のバーで被害者と酒を飲んでいた若い男が浮かび、バーのホステス・大塚君子(夏純子)の証言で、東北なまりの「カメダ」という言葉が手掛かりだった。
名前を東北各県で調べたが成果なく、今西は土地名に広げ吉村と羽後亀田に来たのだったが、何も発見できずに帰る列車で音楽家・和賀英良(加藤剛)に逢った。
西蒲田署の捜査本部は解散、以後は警視庁の継続捜査に移った。
中央線塩山付近で夜行列車から女が白い紙吹雪を窓外に散らしたと毎朝新聞記者・松崎(穂積隆信)から聞き、女・高木理恵子(島田陽子)を吉村は訪ねたが知らないと言ったまま姿を消した。
その店に和賀英良が客として現われた、和賀は期待の現代音楽家で、現在「宿命」という大交響楽の創作中で、前大蔵大臣・田所重喜(佐分利信)の令嬢・田所佐知子(山口果林)との結婚が噂されていた。
50日後、被害者の息子・三木彰吉(松山政路)が警視庁に現われ確認した、被害者・三木謙一(緒形拳)の住所は岡山県江見町で、被害者の知人にも土地にもカメダはなく伊勢参りに出かけたまま行方不明だった、今西は国立国語研究所の学者から島根県出雲地方に音韻が東北弁と類似のズーズー弁があり、近くに「亀嵩」の地名を発見し、三木謙一はそこで20年間巡査生活をしていた。
今西は亀嵩へゆき安本(花澤徳衛)の紹介で三木と親友の桐原老人(笠智衆)から善行ばかりの人間と聞き動機はなかった。
吉村は塩山付近の線路添いを調べ廻り「紙吹雪」を発見したが布切れで被害者と同じ血液反応があった。
あるアパートに理恵子と愛人の和賀がおり、妊娠した理恵子が子供を生みたいというが和賀は拒否した、佐知子との結婚で上流社会へ踏み出す時だった。
今西は三木が伊勢から何故東京に来たか疑問で、伊勢に行き宿の女中(春川ますみ)から映画館へ2日続けて行ったと聞き映画館・ひかり座の支配人(渥美清)からは両日で異なる映画を放映したと聞き、今西は重大なヒントを得た。
本庁の今西に、亀嵩の桐原老人から三木の在職中の出来事の報告書が届き、その中で三木が乞食の父子を世話し親を病院に入れた後、引き取った子を養育してが子は家出したとあった。
今西は、その乞食・本浦千代吉(加藤嘉)の本籍地・石川県江沼郡へ行き山下妙(菅井きん)から事情を聞いた。
和賀から子供を拒否された理恵子は、路上で流産し死に身元不明となった。
今西は、和賀英良の本籍地・大阪市浪速区恵比寿町へ廻り、戸籍は空襲で焼けて自己申告で再生されており和賀は戸籍では両親を亡くした子供だったが、古い飲み屋(殿山泰司)から子供はなく和賀自転車店には小僧が居たと聞いた。
<以下、隠し字>
捜査一課長(内藤武敏)・捜査一課係長(稲葉義男)等全員で合同捜査会議が開かれた。その日は、和賀英良が大交響曲「宿命」を、発表する日だった。
今西は和賀英良が容疑人と述べ、和賀を尾行していた吉村は理恵子のアパート・若葉荘をつきとめ近所の小母さん(野村昭子)の証言等から和賀との繋がりと死亡を確認した。
「宿命」を演奏する和賀と容疑を説明する今西には、石川県の田舎を追われた本浦千代吉と息子・本浦秀夫(春田和秀)の旅と、亀嵩で三木巡査に会い育てられ、失踪し大阪の恵比寿町の和賀自転車店の小僧で、戦災死した店主夫婦の戸籍を偽造した、和賀英良のイメージが浮かんでいた。
そして、三木謙一殺害の動機は・・・・・・。
監督:野村芳太郎
脚本:橋本忍・山田洋次
原作:松本清張
出演者:丹波哲郎・森田健作・加藤剛・島田陽子・佐分利信・山口果林・緒形拳・松山政路・笠智衆・加藤嘉・春田和秀・穂積隆信・花澤徳衛・春川ますみ・渥美清・菅井きん・殿山泰司・内藤武敏・稲葉義男・野村昭子・夏純子
制作年:1974年感想: ミステリとしては原作は疑問が複数あり、映像も一部それが残っています。
映像では、各地への捜査を点ではなく線で描き多くの風景の場面を演出し、その上ラストでは、映像は小説では無理な事が可能である事を示しその後の映画に大きな影響を与えた作品です。
本作をミステリ的に見るのも良いがそれでは小説を越えず常識的に納得出来ない所も複数あるが、宿命・親子のキーワードで見ると後半約40分の、巡礼旅の映像と音楽「宿命」と今西の事件の説明は一体となり映像ならではの記憶となるでしょう。
(2013/01/10)
- トラック野郎 故郷特急便
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銚子市場から荷を高知へ運ぶことになった桃次郎(菅原文太)とジョナサン(愛川欣也)は、カーフェリーで高知に向かった。
同じ船に乗り合せた地方廻りの歌手、小野川結花(石川さゆり)が楽譜を海に落とし桃次郎は海に投びこみ集めた。
高知でジョナサンは目がくらみ、診断で脳血栓の疑いとなった。
悲観したジョナサン、足摺岬で自殺を企るが、ドライブインの店員・風美子(森下愛子)に助けられた。
桃次郎は、彼女を家に送っていくが家では中気の母(小畠絹子)が寝ていた。
隣の老人・垣内清馬(大坂志郎)は六年前から行方不明の息子・竜次(原田大二郎)に風美子を妻に迎えたかった。
数日後、土佐犬をわきに座らせたトラック野郎・竜次に会った桃次郎は清馬にいくと、風美子の母が危篤で、「南国土佐」を聞かせたいといった。
桃次郎はキャバレーで唄っている結花を、ヤクザの岩瀬(安部徹)の静止を無視して連れ出し、臨終に唄を聞かせた。
一方、ジョナサンは病気は軽く、全快して戻った。
清馬の家では竜次が六年ぶりに帰ってきて、6年前の闘犬大会の決着をつけると言った。大会で、竜次の竜馬号と岩瀬の犬が闘い、トラック仲間や風美子が応援で竜馬号は逆転勝ちした。
<以下、隠し字>
桃治郎は、肩を寄せ合う竜次と風美子を見た。
桃次郎がかって乗せて、結花の歌を聞いた事のある外国人(大月ウルフ)はアメリカのレコード会社のディレクターで、結花を大阪梅田コマに出演させると言った。
了解した結花だが、桃次郎にプロポーズされて一緒になり歌は諦める決心をした。
「あなたのお嫁さんにして」という結花をのせて、一番星は3時間の高松まで2時間半で向かうトラックをスタートさせた。
監督:鈴木則文
脚本:中島丈博・松島利昭
出演:菅原文太・愛川欣也・春川ますみ・石川さゆり・森下愛子・原田大二郎
制作年:1979年感想: 定番のシリーズの1作で、ストーリーも定番です、それがシリーズでしょう。
桃次郎はふたりの女性に惚れるが、最後は別れる。
一方は、あやうく??一緒になりかけるが・・・。
(2013/01/16)
- セラフィムの夜
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美大時代にいた剣道部に顔を出した上条涼子(大沢逸美)は、後輩の大島博之(西島秀俊)と再会するが、彼のアトリエを訪ね博之が涼子の姿を想像してヌード絵を描いていると知った。
憤慨した涼子は、そこで博之の異母兄弟で韓国人とのハーフの右翼団体幹部・山本辰夫(白竜)と出会った。
しばらくして涼子は医者(下元史朗)から「睾丸性女性化症候群」で性的には男であるとの診断を受けた。
それを知った博之は、涼子が男でも両性具有者でも愛すと涼子を抱くが、涼子は博之を刺し殺した。
博之の死を知り辰夫は死体を庭に埋め、涼子と韓国に逃亡を図った。
ふたりの前に、辰夫の右翼団体から雇われた殺し屋・金(國村隼)が現れた。
在日韓国人の金は、日本人になり韓国人に戻ったりする辰夫が許せなかった。
金に涼子が実は男と告げられた辰夫は、涼子に冷たくあたった。
金は、自分がいつの間にか涼子にひかれていることに気づいた。
従姉妹の売春婦・崔(森崎めぐみ)に連れられて生みの母を訪ねた辰夫は、「ここはお前の故郷ではない」と母(高橋恵子)から拒絶された。
行き場を失った辰夫は、追って来た涼子の前で金と決着をつけようとした。
ともに死に、涼子は辰夫と金の遺体を抱き続けた。
監督:高橋伴明
脚本:鹿水晶子・剣山象
原作:花村萬月
出演:大沢逸美・白竜・西島秀俊・國村隼・森崎めぐみ・高橋恵子・下元史朗感想: 女・男・両性という中間の人間、韓国と日本のハーフという人間。
自分が何かを求めるふたりは、理解者として求めるがそれは可能だろうか。
(2013/01/22)
- インストール
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17歳の女子高生・野沢朝子(上戸彩)は父を亡くし、恋人・コウイチ(中村七之助)の事故死以降、人生の目標を見出せなく授業に身が入らず、教師・モモコ先生(菊川怜)にも叱られて、母・野沢毬恵(田中好子)に内緒で不登校生徒になった。
妄想の中に出てくるコウイチから問われる度に落ち込み何も考えられなくなり、部屋を空っぽになる程に物を捨てた。
朝子が捨てた故障したと思っていたパソコンを貰った小学生・青木かずよし(神木隆之介)はアプリケーションをインストールして復旧した。
かずよしは母・青木かより(小島聖)の出勤後にケータイ・サイトで匿名で知り合った風俗嬢・雅の代わりに男たちとHな会話する、エロチャットのバイトを行っており、朝子はかずよしの授業中の午前10時から午後2時まで間の誘いを受けて始め、パソコンは苦手な朝子だが次第にハマっていく。
その内に、何が嘘で何が本当かが判らなくなって行った。
母・毬恵が朝子の部屋の空っぽに気づき、かずよしの母・かよりとも会った。
かよりは、家の冷蔵庫の炭酸飲料の減り具合から早くに知っていたが、慌てた朝子はパソコンをウイルス感染させた。
その間、半年経ったが朝子は現実の世界に引き戻されたが、何が変わったか判らなくまだ目標もなかった。
夢であうコウイチは、いつか判ると言い別れをつげ、朝子は学校に戻った。
そして・・・。
監督:片岡K
脚本:大森美香
原作:綿矢りさ
出演:上戸彩・神木隆之介・田中好子・小島聖・中村七之助・菊川怜
制作年:2004年感想: 目標がないと生きてゆけないのかと悩む主人公の高校生の結論は・・。
コンピュータはインストールで元に戻るが、人間はそれでは満足出来ない。
人間の成長について問いかける。
(2013/01/28)