鑑賞日記(2012/07)
- 真夜中の招待状
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稲川圭子(小林麻美)は病院の精神科に会沢吉男(高橋悦史)を訪ねた。
会沢は山崎という患者に絵で精神性の足の病気の治療をしていた。
圭子は、フィアンセの田村樹生(小林薫)がノイローゼで、会沢に相談に来た。
樹生は幼い頃、田村家に養子にきたが元は四人兄弟の末っ子だった、その三人の兄が失踪したのだ。
熊本で薬局を営む長兄・原田順吉(藤田まこと)が二年前に、沼津の三兄の原田捷平(竹内のぶし)が二ヵ月前に失踪し、それを調べていた東海村原子力研究員の次兄・原田和生(渡瀬恒彦)も直前に失踪したため、樹生は次は自分の番だと心配していた。
圭子の父・稲川英輔(芦田伸介)や母は婚約破棄を勧めていた。
圭子は友達の明石五月(頼近美津子)の店で、会沢と会い樹生の家に向かった。
会沢は、人間には夢で将来予知する能力があるとして樹生に夢の記述をすすめた。
圭子と会沢は東海村の和生を訪ね、妻・原田広子(中島ゆたか)に会い、記者のその弟・藤村邦直(下絛アトム)から協力を得た。
樹生と圭子は、沼津の捷平の妻・原田里江(鹿沼えり)から、捷平が長兄の順吉を訪ねた時に写した写真に老人が写っていたことや和生も度々来てそれを聞いた事を知った。
圭子は順吉のいた熊本に向い、そこで五月と出会うが直ぐいなくなった、順吉の妻・ミツ(宮下順子)は兄の久世豊吉(米倉斉加年)の所におり、久世は順吉の描いた絵にも写真の老人がいたといった。
東京で、樹生の日誌を読んだ会沢は作為を感じ、東大の杉林(丹波哲郎)の催眠術の実験を樹生と圭子に見せた。
樹生は「兄たちは皆11日に失踪した。あさっての9月11日は僕の番だ」といい、その日会社から樹生は消えた。
<以下、隠し字>
会沢は樹生に、藤村の尾行をつけて行先を熊本とつきとめたが、そこで和生と五月の死体が見つかった。
和生が死んでから12時間後に五月が、後追い自殺した様だ。
圭子・会沢・藤村は、順吉の妻・ミツから真相を聞き、高千穂線に乗り、和生の夢と同じ光景を見た。
そして、4人の失踪の訳を知り・・・・。
監督:野村芳太郎
脚本:野上龍雄
原作:遠藤周作「闇のよぶ声」
出演:小林麻美・小林薫・高橋悦史・藤田まこと・宮下順子・米倉斉加年・渡瀬恒彦・頼近美津子・中島ゆたか・下絛アトム
製作年:1981年
感想: フロイトの「夢判断」は多くの作家に色々な発想をもたらしたようです。
本作もそれを下敷きにした、サスペンスです。
真相は全て、推測可能ではないが、所どころに伏線と偶然が重なり、意外性はあります。
絵とか、夢の映像とか、映画向きに仕上がっています。
(2012/07/02)
- 君よ憤怒の河を渉れ
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10/10に、東京地検検事・杜丘冬人(高倉健)は、新宿で水沢恵子と名乗る女から「強盗殺人犯」と騒がれ緊急逮捕され、しかも別の男・寺田俊明がカメラ泥棒と供述した。
杜丘の家宅捜査でも証拠が出て、罠と知った杜丘は逃亡した。
杜丘は水沢恵子を訪ねたが、10/1に入ったばかりで既に引っ越していたので、郷里の能登へ向かった。
10/13に能登で杜丘は恵子の家から出た2人の男を見たが恵子は殺されており、本名は横路加代(伊佐山ひろ子)で、寺田は夫の横路敬二(田中邦衛)と判明した。
杜丘は、加代あての手紙から横路敬二がいる北海道の様似に向かった。
後で加代の死体を見つけた警察は、杜丘の逮捕状を「強盗犯」から「横路加代殺人容疑」にきりかえた。
警視庁捜査一課の矢村警部(原田芳雄)は、横路がモルモットやハツカネズミを飼育し、製薬会社の実験用に売っていたことを知るが杜丘との関係は無かった。
北海道様似で、杜丘は横路の家を見つけたが、刑事が待ちうけており、日高山中に逃げ込んだ。
その杜丘を、警察ではない散弾銃を待った二人の男が追って来た。
杜丘は逃げながらある事件を回想した、「ホテルから飛び降り即死した朝倉代議士を、証人の政界の黒幕・長岡了介(西村晃 )は自殺と言い、矢村警部も自殺説で、杜丘は他殺説で一人で調べ続けていた」。
森の中で杜丘は、獣の罠に仕掛けてあった銃を見つけてとりはずしたが、巨大な熊が若い女に襲いかかるのを見て熊に発砲し、杜丘は激流に落ちた。
杜丘は遠波牧場で目を覚ました、熊に襲われそうになった牧場の娘・遠波真由美(中野良子)が救った。
自家用セスナで戻ってきた真由美の父・遠波善紀(大滝秀治)は北海道知事選に立候補予定で、一人娘が杜丘に好意を持つ事に悩み杜丘に自首を勧めた。
しかし秘書の中山(岩崎信忠)が警察に通報し、真由美は杜丘を山の小屋にかくまった。しかし、食料を運ぶのを矢村に尾けられ杜丘は逮捕された、その時いつかの熊が三人を襲い矢村が負傷した。
杜丘と真由美は矢村を介抱したが、矢村がまだ杜丘を逮捕しようとし、ふたりは再び岩場の穴に逃げ込み、杜丘と真由美は二人の愛を誓った。
遠波は、娘のために知事選をあきらめ杜丘を逃がす決心をし、警察の包囲を抜けるために自家用セスナ機を杜丘に提供し、操縦のできない杜丘だが命を賭け飛び立った。
東京に戻った矢村は三沢のレーダーがセスナを捕らえたが低空飛行で逃げたと知った。
セスナは夏海海岸に着水し、警察は東京間に検問を設けた。
遠波は真由美を牧場の仕事で東京に向かわせた。
矢村は製薬会社の酒井義広(内藤武敏)と横路敬二から朝倉代議士が賄賂を取っていた疑いを持った。
10/20に杜丘は長野で発見された、迂回ルートで東京に向かっていたのだ。
10/21に疲れ果てた杜丘は、大月京子(倍賞美津子)という水商売の女に助けられた。
杜丘は「生きる為に法律を破った」と言い、京子は「法律を守っていては生きてゆけない」と答えた、杜丘の考え方が変化して行った。
矢村は横路を追い、緑が丘病院で院長・堂塔正康(岡田英次)にあうが、横路は精神分裂症で会えないと言われた。
杜丘は新宿に入るが警備が厳しく、遠波から聞いた真由美へ連絡した。
警察に包囲されたが真由美は、馬を暴走させ杜丘を救出した。
二人の逃げたホテルを見つけて矢村が来て、横路がいる病院を教えた。
真由美は妻になりすまし、病気を装う杜丘を横路が強制収容された病院に患者として潜入させた。
杜丘は病院内を調べようとして2人組に捕まり、堂塔が秘かに新薬の生体実験をしている事と横路は既に薬に侵されていた事を知り、杜丘もその薬を飲まされた。
<以下、隠し字>
真由美は、無理に院長に杜丘に会わせるが杜丘は知らない様子で密かに薬を渡した。
真由美は矢村に薬の分析を依頼した。
長岡了介が院長・堂塔を訪問して新薬の生体実験の結果を聞き、杜丘にも会った。
院長は杜丘を自殺に見せかけて殺そうとするが・・・。
監督:佐藤純弥
脚本:田坂啓・佐藤純弥
原作:西村寿行
出演:高倉健・原田芳雄・池部良・中野良子・大滝秀治・西村晃・岡田英次・倍賞美津子・伊佐山ひろ子・田中邦衛
製作年:1976年感想: 文字通りのアクション大作です。
広い地域を駆け抜ける逃亡と追跡は、次々と意外な展開を見せます。
途中挟まれる動機と真相解明の部分が色あせてしまいます。
1視点の追跡行としては究極的です。
主人公を結果的に助ける次々登場する人物の生き方は、誰かに共感を得るかもしれません。
同時に、杜丘と真由美との恋愛の話とも言えます。
(2012/07/08)
- 霧の旗
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編集記者・阿部啓一(三浦友和)が柳田桐子(山口百恵)に始めて会ったのは、九州・小倉での事件の弁護依頼で桐子が東京の大塚欽三(三國連太郎)法律事務所を訪問した時だった。
小倉でタイピストをしながら兄・正夫(関口宏)と暮らしていたが、兄が高利貸し(原泉)殺しの容疑で逮捕されて高名な弁護士である大塚を頼って来たのだった。
大塚欽三法律事務所は丁度、兵童代議士(金田龍之助)から東亜医大の寄付金問題の弁護依頼を受けていたので、白鳥弁護士(大和田伸也)も無理だと言い、大塚も時間もなく遠方の依頼は費用がかかるし、自分以外の弁護士も九州にいると断った。
啓一は、寄付金問題の取材で大塚欽三法律事務所に来ていたが、お金に拘る大塚の態度で桐子に同情した。
大塚は、妻・芳子(加藤治子)がいたが愛人・河野径子(小山明子)もいた。
九州に行けない啓一は、幾度か桐子に手紙を送るが返事は無かった。
小倉の事件は国選弁護士が情量酌量の手段を選び、兄・正夫は有罪になり獄死した。
大塚は、正夫の裁判記録を取り寄せていた。
啓一は記者仲間と飲みに行ったクラブで、理恵という名の上京したばかりの桐子に再会した。
桐子は、正夫の無実を信じる啓一にもう元に戻らない事と答え、自分に関わらないで欲しいと言った、そして桐子は同郷の江原信子(児島美ゆき)の家にいた。
啓一は、正夫の公判記録を取り寄せようとして、大塚が既に取り寄せて見直している事を知った、大塚は記録から犯人は左利きと考えた。
クラブには、江原信子の愛人の杉浦健次(夏夕介)や彼ともめていた山上武雄(石橋蓮司)も来たが、信子は山上を九州出身の元有名なサウスポーと言った。
江原信子は、杉浦の浮気を疑い桐子に尾行を頼む、桐子は部屋から出てこないと信子に電話するが、直後に杉浦は外出してあるビルに入った。
桐子は、信子に電話するが忙しくて連絡出来なかったが、ビルから男が出て来た後に、河野径子が来てビルに入り、追った桐子と同じエレベーターに乗った。
部屋に入った径子は悲鳴を上げて飛び出し桐子に証人を頼んだ、部屋には杉浦の死体と柄模様のライターがあった。
桐子は径子に証人の約束をして、径子が帰った後で部屋に戻りライターを拾った。
径子は逮捕されて、桐子が証人と言うが、径子が大塚の愛人であると知った桐子は証人にならなかった。
<以下、隠し字>
啓一は桐子が変わったクラブを訪れ、偽証をしていると言うが桐子は否定した。
愛人・径子の為に、大塚も度々桐子をクラブに訪ねて証言とライター提出を頼むが、桐子は否定した。
監督:西河克己
脚本:服部佳
原作:松本清張
出演者:山口百恵・三浦友和・三國連太郎・関口宏・小山明子・加藤治子・児島美ゆき・夏夕介・石橋蓮司・大和田伸也
制作年:1977年感想: 金の為に兄の弁護を断られれ兄が死んだ妹の復讐談です。
しかし、計画的ではなく偶然の出来事であり、サスペンス色が濃いです。
ふたつの事件の犯人が同じ特徴を持つ事は、設定の趣向ですが、実際に犯人が分かるのは後半の殺人のみでしょう、九州人だけでは前半は何とも言えない。
偶然がなければ、桐子はどのような復讐を考えたのでしょうか?、それは謎です。
(2012/07/14)
- アンダルシア 女神の報復
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パリ・サミットで村上外務大臣(夏八木勲)がマネー・ロンダリング=資金洗浄の規制の提案をしたが、他国の反応は弱かった。
スペイン北部の小国アンドラで、日本人投資家・川島(谷原章介)が怪我をし、ホテルでビクトル銀行行員の新藤結花(黒木メイサ)にルーカスと会いたいと言った。
その後に死に、結花は残った書類を焼き、証拠品を処分した後に通報した。
サミットの準備でパリにいた外交官・黒田康作(織田裕二)は、事態把握のためにアンドラに派遣された、川島は警察長官の息子だった。
遺体の第一発見者の銀行員の結花と、事件担当のインターポール捜査官の神足誠(伊藤英明)に会うが、結花は多くを語らず何かに怯え、神足は捜査情報を隠そうとした。
神足は結花を容疑者として監視するが結花は逃げだし、インターポール以外に後を追うグループがいた。
結花を助けた出した黒田は保護のためにバルセロナの日本領事館に向かった。
領事館長は前例ないと悩むが、黒田のローマ時代の同僚で研修生から外交官になった安達(戸田恵梨香)は、邦人保護は基本という。
黒田は、馴染みのジャーナリスト佐伯(福山雅治)からビクトル銀行が怪しい情報を得るが、結花は領事館から逃げだしインターポールともう一つのグループに追われた。
神足と黒田は結花を捕まえてインターポールで調べるが証言を隠していると感じた。
安達は黒田に「ヨーロッパは銀行の競争が激しく、ビクトル銀行とスペイン投資銀行はライバル関係にある」と言った。
一方、神足は川島が架空取引で多額の損失があった疑いをしめし、黒田はインターポール内にスパイがいると伝えた。
結花は家族を全て火事で無くした過去があり、神足は内部告発によって子供を日本に残して海外に飛ばされていた。
結花は神足と黒田に「アンダルシアで大きな取引がある」と教え、3人はその場所の修道院に向かった。
結花は過去を語り取引を語り、川島は自殺だと言った。
日本では、川島警察長官の息子の不祥事を隠すために、総理は外務省の特別室の安藤(鹿賀丈史)を通して黒田に中止を命じさせたが黒田は拒否した。
<以下、隠し字>
同様の神足と黒田は対応でもめて、黒田をはずそうとするが黒田は修道院に現れ神足に撃たれた。
神足とインターポールは、ビクトル銀行と国際マフィアを捕らえてマネー・ロンダリングを明らかにした。
結花はスペイン投資銀行を訪れ、そして次に・・・。
監督:西谷弘
脚本:池上純哉
原作:真保裕一
出演:織田裕二・黒木メイサ・伊藤英明・戸田恵梨香・福山雅治・谷原章介・夏八木勲・鹿賀丈史
制作年:2010年感想: ヨーロッパ舞台の外交官黒田シリーズの2作目です。
特殊任務の外交官という設定で所どころ情報提供者が現れます。
一方で左遷的にインターポール出向中の警察官が、謎の銀行員が絡む事件とその背景の大きな組織犯罪の謎を追います。
(2012/07/20)
- 椿三十郎
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九人の若侍「井坂伊織(加山雄三)・寺田文治(平田昭彦)・保川邦衛(田中邦衛)・河原晋(太刀川寛)・守島隼人(久保明)・守島広之進(波里達彦)・関口信伍(江原達怡)・八田覚蔵(松井鍵三)・広瀬俊平(土屋嘉男)」が社殿で密議をしていた。
城代家老・睦田(伊藤雄之助)に、次席家老・黒藤(志村喬)と国許用人・竹林(藤原釜足)の汚職への意見書を出しても受け入れられず、大目付・菊井(清水将夫)には理解されて集っていた。
そこへ浪人者(三船敏郎)が現れて、城代家老が本物で大目付の菊井が黒幕だといって驚かせたが、既に社殿は大目付輩下に取りまかれていた。
浪人者は、九人を床下へ隠し一人で急場を逃れたが、敵方の用心棒・室戸半兵衛(仲代達矢)は浪人者の腕に驚き仕官するなら大目付屋敷に来いと言った。
困りはてた若待に浪人者は力をかすことにして城代家老の屋敷に向かったが、城代家老は屋敷から既に連れさられ、夫人(入江たか子)と娘・千鳥(団令子)が監禁されていた。
黒藤の屋敷の隣が寺田文治の屋敷で、そこへ集まり城代家老屋敷に乗り込み見張りの侍・木村(小林桂樹)を捕らえ、夫人と娘を救い出した。
黒藤の屋敷は椿屋敷と言われるくらい椿の花が咲いており、夫人の問いかけに浪人者は名を椿三十郎と言った。
城代家老の居場所を探したが各所に使いを走らせた室戸の策により、間違った後を追ってしまうがぎりぎり逃れた。
三十郎は探るために室戸を訪ね、室戸は三十郎の腕を買い味方にしようと、菊井・黒藤の汚職を話して自分の相棒になれとすすめた。
三十郎を信用しない保川と井坂らは、裏切りを心配して後をつけるが、室戸に見つかり四人は捕えられた。
三十郎は室戸の留守に番人を斬り、自分をしばらせて四人を逃がすが三十郎は室戸から用心棒を馘になった。
寺田の家に帰った三十郎だが、夫人が寺田の庭の隅を通っている椿屋敷から流れてくる川の中から意見書の紙片を拾って来た。
家老は黒藤の家に監禁されていると判り、三十郎は黒藤の警戒を他に向けるために謀反人が光明寺に集っていると知らせた。
皆が寺に出かけるが、寺には山門がなく門の上に寝ていたという嘘がばれ、三十郎は捕らえられた。
<以下、隠し字>
臆病な竹林は三十郎の言葉に騙されて合図の椿の花を川に流し、若待達の斬込みで城代家老と三十郎は救われた。
三十郎は藩を去ろうとするが、室戸は一騎打を望み討たれた。
三十郎は若侍九人の見送りをうけて静かに去っていった。
監督:黒澤明
脚色:菊島隆三・小国英雄・黒澤明
原作:山本周五郎
出演:三船敏郎・仲代達矢・志村喬・藤原釜足・清水将夫・入江たか子・団令子・小林桂樹・加山雄三・平田昭彦・田中邦衛
制作年:1962年感想: 世間知らずの若侍らを助ける椿三十郎ですが、城代家老や夫人や娘や人質の木村ののんびり・とぼけた性格はユーモアたっぷりです。
大目付一味はいささか頼りない為に、用心棒にあしらわれている。
細部の小細工が巧妙な作品です。
(2012/07/26)