鑑賞日記(2012/06)
- 風林火山
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山本勘助(三船敏郎)は、武田の家老板垣信方(中村翫右衛門)暗殺劇を仕組んで仕官を狙い、その後に勘助は甲斐に来て武平(緒形拳)に会い、板垣に仕官した。
勘助は諏訪を攻めて信濃に出る時期と言い、武田晴信(萬屋錦之介)へ紹介され取り立てられた。
晴信は勘助の進言で信濃の諏訪頼茂(平田昭彦)を攻め、機を見て勘助は和議し、由布姫(佐久間良子)と会った。
三度目に頼茂が甲斐に来城した時に頼茂を暗殺し、諏訪高島城を落とした。
勘助は由布姫を救い甲斐につれてきたが、由布姫は晴信の側室に迎えられ勘助は由布姫に子を設ける事を勧めた。
信濃を攻めた武田は、笠原清重(月形龍之介)の城を勘助の計略で落とした。
由布姫は和子を産み、北条の攻めに備えて板垣信方が諏訪に移った。
信濃の最後の敵・村上義清(戸上城太郎)を属城から追い出した。
板垣信方は討ち死にして、継いだ板垣信里(中村嘉葎雄)は父と考えは違うと言った。
晴信は他にも側室を設け勘助に説得されて、晴信は出家し名を信玄と改めた。
越後の上杉謙信(石原裕次郎)に備え、川中島に城を築くが、信里は武田は乱戦に慣れていないと言った。
四年後由布姫は死に、勘助の生甲斐は由布姫の子勝頼の成人だった。
上杉謙信は一万三千の大軍を川中島につれ、武田信玄は一万八千の軍勢を川中島の海津城に進出した。
勘助は謙信の背後の妻女山から敵を追い落とす作戦を行うが、謙信は事前に山を下り武田の本営に攻め込んできて、武田勢は防戦一方になった。
作戦失敗と知った勘助は自ら決死隊を率いて、敵の本営を目がけて突撃し討たれた。
妻女山の背後に回っていた坂垣信里の軍勢が到着して、戦は相討ちの形になった。
監督:稲垣浩
脚本:橋本忍・国弘威雄
原作:井上靖
出演:三船敏郎・萬屋錦之介・佐久間良子・石原裕次郎・中村嘉葎雄・緒形拳・中村勘九郎[5代目]
製作年:1969年
感想: 文献的に実在かどうかが問題の山本勘助を主人公にした作品です。
しかも、由布姫との絡みが大きな比重を占めます。
川中島での山本勘助の死で終わる。
(2012/06/02)
- 天国と地獄
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ナショナル・シューズの経営者達が集まって権藤専務を説得していたが、低品質の靴の販売に反対だった。
権藤金吾(三船敏郎)専務は、全ての財産で株の買い占めで対抗しようとして、5千万円を準備していた。
その時に息子の純(江木俊夫)と間違えて運転手・青木(佐田豊)の息子進一(島津雅彦)を誘拐した犯人から、三千万円を要求する電話があった。
苦境の権藤は、警察に電話して権藤邸に戸倉警部(仲代達矢)達が張り込んだ。
悩んだ末に、権藤は全てを犠牲にして金を調達し、権藤の立場を知った警察は犯人に憎しみを持った。
部下が寝返りより苦境にたち、青木や妻・伶子(香川京子)も子供を助けてと言った。
警察は、身代金の鞄にしかけをし、札番号を控えた。
犯人の要求で、第二こだまに乗り子供を見た後に金を渡す指示で、警察の裏をかいて金は奪われた。
進一は無事にもどり世論は権藤をたたえたが、権藤は会社を追われて債権者が殺到した。警察は犯人が権藤邸を見張った場所や、子供の監禁場所を追った。
青木は進一の書いた絵から、監禁場所を江の島附近と知り調べにいき、田口部長刑事(石山健二郎)と荒井刑事(木村功)は、犯人が捨てた盗難車から江の島の魚市場附近という鑑識の報告から同じ場所、腰越の家に行った。
青木と二人は、その場所を探り出したが、男と女が麻薬によるショック死していた。
戸倉警部は、権藤邸近くの病院の焼却煙突から牡丹色の煙があがるのをみて現場に急行した、鞄に仕掛けた特殊装置が反応したのだ。
<以下、隠し字>
その鞄を燃やした男はインターンの竹内銀次郎(山崎努)とわかり、殺された共犯者男女がこの病院で診察をうけており、そのカルテは竹内が書いていた。
共犯者殺人の証拠を掴むため、戸倉警部は、罠を張り、竹内には十人からの刑事が尾行についた。
監督:黒澤明
脚本:小国英雄・菊島隆三・久板栄二郎・黒澤明
原作:エド・マクベイン:「キングの身代金」
出演者:三船敏郎・仲代達矢・香川京子・佐田豊
制作年:1963年感想: 原作とは最初の設定以外は異なり、オリジナルと言える。
高台に建つ家は天国に見えるか、麻薬のあふれる街は地獄か。
天国から地獄に落ちる覚悟をした男に対して、世論と債権者の見方が異なる。
身代金渡しトリックや、犯人にたどりつく地道な捜査と伏線は、作られた年代の古さを感じさせない。
(2012/06/08)
- ゆれる
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東京で写真家として成功した早川猛(オダギリジョー)は、母の一周忌で久しぶりに帰郷したが、母の葬儀に出ず、父・勇(伊武雅刀)と仲が悪い猛が、温厚な兄の稔(香川照之)は気遣った。
稔は父とガソリンスタンドをやっていて、兄弟の幼なじみの川端智恵子(真木よう子)もそこで働いていた。
猛は母のかたみに映写機とフイルムを貰い、智恵子と再会して彼女と関係を持った。
翌日、兄弟と智恵子は近くの渓谷へ行き、吊り橋を渡る猛を追いかけて智恵子も来、稔も後に来た。
草花をカメラで取っていた猛からは橋が見えた。
吊り橋の上でおよび腰の稔と、智恵子が言い争いして揉み合った、そして智恵子は渓流へ落下した。
捜査の末に事故死となったが、稔は性格が変わり暴力で連行され、警察署で自分が智恵子を突き落としたと言った。
猛は東京で弁護士をしている伯父・修(蟹江敬三)に弁護を依頼し、公判が始まるが、稔は、智恵子の死に罪悪感があり「自分が殺したようなもの」と言ったと述べた。
稔は有利に進むが、証人になる前に猛は面会室で稔に、高所恐怖症なのにどうして吊り橋を渡ったのかと聞いた。
稔は「お前は自分が人殺しの弟になるのが嫌なだけだ」と答えた。
<以下、隠し字>
証言台で猛は、稔が智恵子を突き落としたと証言した。
7年後、スタンドの従業員・洋平が猛に稔が出所することを伝えた。
その晩、母のかたみのフィルムを見た稔は、幼い兄弟観て愕然とした。
監督:西川美和
脚本:西川美和
出演:オダギリジョー・香川照之・伊武雅刀・真木よう子・蟹江敬三・木村祐一
製作年:2006年感想: 対照的な生活をおくる兄弟の食い違いから生じた溝はどうなるのか。
双方に責任のある幼馴染みの死で、それは拡がるのか狭まるのか。
兄弟にスポットを当てすぎているとも言えるが、他に広げる時間の余裕もなさそうです。
(2012/06/14)
- 桜田門外ノ変
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1860年2月、蟄居中の水戸藩士・関鉄之介(大沢たかお)は、妻・ふさ(長谷川京子)と息子の誠一郎(加藤清史郎)を残して出奔した。
江戸では、水戸藩の有志が徳川幕府大老・井伊直弼(伊武雅刀)を討つ計画を持っていた。
鉄之介は江戸で、いの(中村ゆり)を囲っていたが旅に出ると告げた。
水戸藩尊王攘夷派の指導者・金子孫二郎(柄本明)の元に集まり、大老襲撃は3月3日に決まり襲撃実行部隊は、鉄之介ら水戸藩士17名と薩摩藩士・有村次左衛門(坂東巳之助)の18名であり、水戸藩からの脱藩届けを出した。
鉄之介は部隊の指揮を執り、当日に襲撃地点である桜田門へと向かい、一人が大老の行列に直訴状を差出し斬りかかり、同時に仲間のが発砲の音を合図に、斬り合いが始まり大老井伊の首をはねた。
襲撃の翌日に多くの死を確認した。
そして、襲撃を聞いた斉昭は、事件関係者を捕らえる指示を出した。
7年前に黒船が来て、翌年に要求を出したが水戸藩主・徳川斉昭(北大路欣也)は通称には反対したが、その後斉昭は参与を辞任して、井伊直弼が大老になっていた。
井伊は、ハリスと通商条約を勝手に結び、朝廷から水戸藩に勅書が出された。
井伊は幕府への返納を求め、西郷隆盛は薩摩軍の上京を約束し、水戸藩尊王攘夷派は各藩に参加を求めたが、賛同したのは、鉄之介の訪れた鳥取藩のみだった。
そして、安政の大獄が始まった。
井伊襲撃の後に、無事な者は上京するが、薩摩藩は藩主が変わっており出兵しなかった。襲撃関係者は次々と捕らえられた。
鉄之介の家は捜索され、江戸のせいは捕らえられて拷問で獄死した。
鉄之介ら3人は、事態をしり2名は水戸の近くに戻り、鉄之介は仲間の藩を訪ねた。
鳥取藩は方針が変わり、同盟者は失脚していた、その上藩指南役に聞かれて立ち会ったが討ち取った。
薩摩におもむくが、関所を閉ざして近づけなかった。
<以下、隠し字>
鉄之介は、水戸の袋田村の庄屋(本田博太郎)にかくまわれ、家や妻子を遠くで見守った。
斉昭が急逝し、和宮が幕府に嫁ぐ。
関係者の死去の知らせに、井伊ひとり殺すためにどれだけ多くの人の死があったかを思う。
鉄之介も逃亡先で捕らえられ打ち首になった。
襲撃からわずか8年後に、薩長が江戸城に入った。
監督:佐藤純彌
脚本:江良至・佐藤純彌
原作:吉村昭
出演:大沢たかお・長谷川京子・柄本明・生瀬勝久・渡辺裕之・加藤清史郎・中村ゆり・渡部豪太・須賀健太・本田博太郎
製作年:2010年感想: 時代が近い事もあり、桜田門外ノ変の関係者のその後を描いたドキュメント風の作品になっている。
わずか15年の間の出来事だが、あまりに変化が激しく誰も先を読めなかった。
無血革命と言われる事があるが、現実は多くの死者を出した事が判る。
(2012/06/20)
- ツィゴイネルワイゼン
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レコードの一部に声が入っていた、作曲家サラサーテが演奏中にしゃべった声が録音されている「ツィゴイネルワイゼン」だった。
ドイツ語学者、青地豊二郎(藤田敏八)が海岸で死体を見つけた。
友人の中砂糺(原田芳雄)がかけ落ちの相手を捨て、相手が自殺したのだ。
青地は中砂を助け、宿で飲むが空いている芸者は、体に血を溜めて死んだ弟のとむらい帰りの小稲(大谷直子)だけだった。
近くを、老人と若い男女二人の盲目の乞食が通り過ぎたが、老人と若い女は夫婦で、若い男は弟子だった。
中砂は旅を続け、青地は湘南の家に戻るために駅に出ると、3人の乞食の関係が変わっていた。
翌年、青地へ中砂の結婚の知らせが届き、訪問した青地は新妻・園(大谷直子)を見て芸者の小稲と瓜二つで驚いた。
青地は家に戻り、妻・周子(大楠道代)と話す。
中砂は再び旅に出たが、青地が偶然に園と会うと園は青地を誘惑した
戻った中砂は園を、骨をしゃぶる抱き方をした。
周子は花粉症で、体に湿疹が出来ていた。
中砂は旅の間に、しばしば青地家を訪ねて周子と逢っていたし、周子の妹で入院中の妙子(真喜志きさ子)を見舞うこともあり、周子は中砂の目のゴミをなめて取り、中砂は周子の湿疹の体をなめた。
中砂は骨が一番美しいと言い、青地に先に死んだ方の骨をもらう提案をするが、医学的に困難だった。
園は豊子(米倉ゆき)という女の子を産んだが、翌年に風邪をこじらせ死んだ。
ある日、青地は中砂から、うばを雇ったと聞き、うばを見て元芸者の小稲であり驚いた。昔を想い出し、三人は愉快に飲み、中砂は三人の盲目の乞食の話などした。
中砂はまたも旅に出たが、麻酔薬のようなものを吸い過ぎて、旅の途中で事故死した連絡が入った。
中砂家と青地家の交流も途絶えがちになっていき、青地の妹が危篤になった。
ある晩、小稲が青地を訪ねて生前に中砂が貸した本を返してと言った。
二~三日後に、また小稲が別に貸した本を返してもらいに来た。
青地は難解なドイツ語の原書名を言えたのが不思議だったが、また彼女が来て、「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを返して欲しいと言ったが、青地は借りた記憶はなかった。
小稲が帰り、周子が中砂からそのレコードを借りて穏していたので、数日後に青地はそれを持って小稲を訪ねた。
本を貸していたのが分ったのかを訊ねたら、豊子が夢の中で中砂と話して判ったと言った。
中砂を憶えていない筈の豊子が毎夜彼と話をするという。
青地は豊子に会うと、豊子は「生きている人間は本当は死んでいて、死んでいる人が生きている」と言った。
豊子は、船が欲しいといい、父が待っていると青地を誘惑した。
監督:鈴木清順
脚本:田中陽造
出演:原田芳雄・藤田敏八・大谷直子・米倉ゆき・大楠道代・真喜志きさ子
制作年:1980年感想: 時間スケールと、登場人物の奇妙さが絡みあって、難解な内容です。
登場人物のそれぞれに、異なるものが見えるようです。
そして、人と人との関係は時間と共に変わってゆきます。
どれが、現実あるいは本心か正常かさえ判らなくなってゆきます。
(2012/06/26)