鑑賞日記(2012/05)
- 長崎ぶらぶら節
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明治16年に少女がぶらぶら節を歌いながら、長崎・丸山に売られてきた。
大正11年、三味線は長崎一の名芸者となった愛八(吉永小百合)は多くの人に慕われていた。
丸山遊里のおかみ・山口富美江(藤村志保)に呼ばれた愛八や妹分の梅次(原田知世)たちは、宴の前に町芸者・米吉(高島礼子)たちと喧嘩を始めた。
客の大店・万屋の12代目の風俗研究学者・古賀十二郎(渡哲也)は芸で競えと言い、愛八と出会った。
世話好き・子供好きな愛八は、相撲取り・不知火大五郎(永島敏行)や多くの子供・おきみやお雪に優しかった。
条約で戦艦の数を減らすため沈められる船を見て即興で歌った愛八を、自ら望んで財産を使い果たした古賀が聞き、愛八に長崎に伝わる歌を探し記録したいと言った。
古賀は倒産差し押さえの日も妻・艶子(いしだあゆみ)に任せて研究していた。
古賀と愛八は、長崎の古い歌を探して旅を行い、最後に長崎ぶらぶら節に出会った。
愛八は昔聞いて歌った事を思いだし、ふたりは歌探しは終わりにした。
昭和5年に、売られたお雪(尾上紫)を芸者にするべく芸を教えていたが、お雪は肺病で倒れ治療費用の捻出に追われた。
お喜美(高橋かおり)も佐世保に売られて行った。
愛八は、詩人・西條八十(岸部一徳)に「長崎ぶらぶら節」を歌い、紹介でレコードにして印税をお雪の治療費に当てた。
翌年、おきみを探しに佐世保に来たが廃業した不知火から、上海に売られたと聞いた。
古賀の作詞の「浜歌」の印税で雪千代の披露目が決まった。
披露目の席で古賀やお喜美が待っていたが、古賀に会わないと決めた愛八は欠席した。
愛八は、古賀へ手紙を書き、参詣中の天神境内で息絶えた。
監督:深町幸男
脚本:市川森一
原作:なかにし礼
出演:吉永小百合・渡哲也・高島礼子・原田知世・藤村志保・いしだあゆみ・永島敏行・尾上紫・高橋かおり・勝野洋
製作年:2000年
感想: 実在の人物の物語である。
生涯を他人への無償の世話と愛とで尽くした、ひとりの女性が主人公です。
時代が多くの人を不幸にしたが、その中で多くの者が彼女によって生きて行った。
(2012/05/03)
- 壬生義士伝
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明治32年東京市、大野医院に病気の孫を連れた老人・斎藤一(佐藤浩市)が訪れ、かつて新選組で一緒に戦った隊士・吉村貫一郎(中井貴一)の写真を見つけた。
幕末に新撰組の新入りで近藤勇(塩見三省)・土方歳三(野村祐人)・沖田総司(堺雅人)らの前で永倉との剣の試合から吉村は剣術師範になった。
斎藤は、近藤勇は俗物で、吉村も南部藩の国自慢・家族自慢する俗物と思った。
斎藤は吉村が「死にたくないから人を斬る」といい、金をほしがるために嫌った。
吉村は南部藩で教官をしていたが幼友の大野次郎右衛門(三宅裕司)が大家の養子になり身分に差が生じた。
百姓のしず(夏川結衣)をめとり、嘉一郎(藤間宇宙)とみつの子供があったが、脱藩した。
新選組に入隊した吉村は、次郎右衛門の配下・洋助(山田辰夫)を通して妻子に金を送っており、次郎右衛門の息子・大野千秋(幼少・伊藤淳史)はそれを知った。
斎藤の組内での殺害を知った吉村は口止め料を要求して斎藤の愛人・ぬい(中谷美紀)と出会った。
新撰組は分裂して、朝廷派は斎藤と吉村に参加を求めるが、吉村は「二度の脱藩はない」と断り斎藤は間者として入り、近藤勇殺害計画を伝える密書が、斎藤>ぬい>吉村>近藤に渡った。
斎藤はぬいと別れようとするがぬいの望みで結ばれ、後日ぬいは自害した。
発見した吉村は、貧困から口減らしの為自害しようとした妻を見て、妻子を養うために脱藩した事を思いだした。
大政奉還があり、賊軍となった新選組は官軍の制圧に遭うが、貫一郎は脱藩で裏切った義を二度と裏切れないと最後まで戦った。
<以下、隠し字>
傷ついた吉村は大阪蔵屋敷差配役の大野次郎右衛門を訪れ切腹した。
大野千秋は吉村の妻子に報告し、のちに大野次郎右衛門は義を守り討ち死んだ。
嘉一郎は、みつを大野千秋にあずけ、箱館にゆき消息を絶った。
斎藤は、思いかけず次郎右衛門の息子・大野千秋(村田雄浩)から、貫一郎の最期を聞き今は千秋の妻となった小児科医・みつ(夏川結衣)の診断を終えた孫を連れ帰った。
満州で病院を開く大野夫妻に、博徒となった洋助はお守りを贈った。
監督:滝田洋二郎
脚本:中島丈博
原作:浅田次郎
出演:中井貴一・佐藤浩市・三宅裕司・夏川結衣・中谷美紀・村田雄浩・塩見三省・堺雅人・野村祐人・斎藤歩
製作年:2002年感想: 膨大な内容を含むストーリーをうまく詰め込んだ作品です。
複数の登場人物の思いが、色々な形で伝わります。
義と愛と、そして貧困に苦しみ悩む姿が色々な形と人物で描かれます。
(2012/05/09)
- 小津の秋
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新聞記者の佐々木明子(沢口靖子)は蓼科に来た、土偶の取材だが、父の遺品を持ち個人的な目的もあった。
明子は吉岡園子(藤村志保)という老婦人を観光スポットの小さな庵・無藝荘の主として見かけ、ホテルの支配人・四村茂(栗塚旭)が紅茶を注いでいた。
無藝荘は元は小津安二郎の別荘で、町で映画祭が予定されていた。
明子はホテルで母の死を思い出し、フランクフルトの恋人・河元達也(草野康太)と結婚する前に明らかにしたい事があった。
翌日、津島神社で明子に会った園子は、似ていると思った。
四村と釣りをしながら、明子は女神湖工事の頃や園子の事を知りたいと聞き、四村は園子は昭和19年の空襲で足を痛めた頃からの幼馴染みと答えた。
明子は女神湖の開発設計者だった父が描いた絵を見つけた。
明子は園子に会うが、園子は拒み「恨みながら愛せるか」と言い、明子は「手に入れられないものも有る」と答え、園子は「簡単に手に入ると軽く扱う」と答えた。
明子がホテルで会ったカップルが自殺し、カップルが会ってから3日目と知ったが園子は「死は楽だが、女は死ねない」と言った。
明子は父の遺品の「最後の一葉」の本を持って園子を訪れて両親の事を話した「父は3歳で死に、母が写真を焼いたので何も知らない」「母は2ヶ月前に死に、私の心には裏切った父と恨んだ母がいる」と言った。
園子は「蓼科で女神湖の開発設計の青年と恋に落ちた。青年には妻子がいたが二人で外国に行く約束の日青年は来ず、園子は身篭っていた子供を堕ろした。私は裏切られ誰もいないが、明子の母には明子がいた」と答えた。
<以下、隠し字>
明子は、「父は園子の元へ向かう駅で倒れた。父の心にはあなたしか映っていなかった」と答え、園子は「いつまでも、わたしはあの人を愛しつづけます」と言った。
行方不明になった園子を見つけた四村は、明子に「憎しみを許すのは女神だけ」と言い、明子は女神湖で園子と再度会った。
明子と園子が映画祭に行った帰りに達也が来て、四村と3人で釣りをして二人は蓼科を去った。
園子を四村が訪れ、秋から冬へ変わる蓼科と突然現れて去った若い二人を思った。
監督:野村恵一
脚本:井上大輔・小笠原恭子・野村惠一
出演:沢口靖子・藤村志保・栗塚旭・草野康太・矢崎大貴・浜田晃
製作年:2007年感想: 小津安二郎監督が仕事場として使った別荘「無藝荘」と秋の蓼科が舞台のドラマです。
真実を知らないままに長く苦しんだ人たち、結婚を前に真実を求めに来た明子。
そこには複数の男と女の人生があった。
(2012/05/15)
- 暗いところで待ち合わせ
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交通事故で全盲の本間ミチル(田中麗奈)は、母は家を出て、父・正幸(岸部一徳)と暮らしていたが、父親が誕生日の贈り物を贈った日に突然死に、親族の前でミチルは一人暮らしを始めると言った。
時々訪ねて来る親友の二葉カズエ(宮地真緒)に会う以外は家に閉じこもっており、家の窓の前に駅がありしばしば外を向いていた。
ある朝、駅の方が騒がしく家のチャイムが鳴ったが誰も答えず、素早く家の中に忍び込んだのが大石アキヒロ(チェン・ボーリン)だった。
アキヒロは息をひそめて駅が見える窓の付近に忍び、ミチルは気づかなかったがニュースで、駅での松永(佐藤浩市)の転落事故で重要参考人がアキヒロと報じていた。
アキヒロは中国人で印刷工場では先輩の松永からいじめを受けていた。
ミチルを、三島ハルミ(井川遥)が洗濯物が散っていたと訪ねてきてレストランで働いていると言った。
カズエと、店にゆき写真を撮りあって友達になった、ミチルはカズエに家に何か幽霊のようなものが居る気がすると言った。
ミチルが棚の物を取る時に椅子から足を踏み外したが落下物をアキヒロが受け止め、ミチルが二人分の食事を作るとアキヒロは食べた。
ハルミに、ミチルとカズエがクリスマスパーティを誘った。
家に戻ったミチルは、はっきりと誰かいると気づきカズエに電話するが、歩いて来る様に言われ、出かけるとアキヒロが黙ってサポートした。
<以下、隠し字>
帰りに駅によって詳細を聞いたミチルは、犯行自体は目撃されていないと知った。
アキヒロが窓から駅を見ていたのは誰かを探していたと判り、アキヒロはミチルから借りたコートにあった写真に犯人が写っているのを見た。
監督:天願大介
脚本:天願大介
原作:乙一
出演:田中麗奈・チェンボーリン・井川遥・宮地真緒・佐野史郎・岸部一徳・佐藤浩市
製作年:2006年感想: 盲目の女性と逃亡者の中国人の不思議な生活を描く。
しかし、それぞれが生きる目的を探しておりそれのきっかけになる事が起きる。
そこに、意外な展開と伏線が存在する。
(2012/05/21)
- 危険な女たち
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南紀・白浜の絹村健一郎(小沢栄太郎)と妻・ハナ(北林谷栄)の別荘に三日間、ハナが子供の頃から可愛がっていた藤井冴子(池上季実子)、水野美智子(和由布子)、升森弘(三田村邦彦)と健一郎の病院の院長代行の棚瀬秀雄(寺尾聰)・紀子(大竹しのぶ)夫妻が別荘に滞在に来た。
隣の別荘のミステリー作家の枇杷坂周平(石坂浩二)と小児端息の療養で別荘にいる棚瀬夫妻の息子・守も加わり食事会が始まった。
守はモデルガンを集め、改造拳銃も持っていた。
冴子と弘が婚約を発表したが、冴子と秀雄は浮気していた。
紀子は、瀬戸物を割ったり、いつも通り不器用で頼りなかった。
枇杷坂が帰り、橋まゆみ(藤真利子)という女性が現われ、自分の借りた別荘の電気がつかなく困っているといった、秀雄が電気の具合を見に行くことになったが、二人は昔つきあっていて再会したのだった。
弘は冴子に結婚を断わられ、美智子に突然結婚を申し込んだが、弘が好きな美智子は酒の勢いでは悲しかった。
翌朝、皆は海へ釣りに出かけ別れて楽しんでいる時、銃声が鳴った。
集まった皆は、倒れている秀雄と拳銃を握りぼう然と立ちつくす紀子を見た、秀雄は「冴子……」と言って死んだ。
和歌山県警の堂園警部(夏八木勲)は紀子が犯人と決めていたが、ハナは不器用な紀子には出来ないと言い、気がついた紀子も何となく落ちていた拳銃を拾ったと答えた。
冴子が海中に投げ捨てた拳銃が発見されたが、それはモデルガンで捜査はやり直しになった。
枇杷坂はこの事件をもとに小説を書き始めた。
数日後、冴子、美智子、弘、紀子は別荘から帰宅し健一郎も棚瀬の院長代行に変わり院長に復帰した。
枇杷坂の車から、改造拳銃が見つかった。
<以下、隠し字>
枇杷坂は書きあげた小説をハナに読んでもらったが、真実を知っていたハナは読んで驚いた。
ハナの電話で冴子も真実を知った。
監督:野村芳太郎
脚本:古田求
原作:アガサ・クリスティ 「ホロー荘の殺人」
出演:大竹しのぶ・池上季実子・藤真利子・小沢栄太郎・北林谷栄・寺尾聰・三田村邦彦・石坂浩二・日色ともゑ
製作年:1985年感想: 忠実な本格ミステリですので、登場人物の出し入れとミステリ慣れから、犯人は50%位は想像出来て判り易いが、正確な動機の再構成まではやや難しいだろう。
作中で、枇杷坂とハナが行うミステリ小説談義も見所だろう。
(2012/05/27)