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鑑賞日記(2012/03)

陽はまた昇る

70年代前半、日本ビクター本社開発部門の開発技師・加賀谷静男(西田敏行)に、事業部長として赤字続きの横浜工場ビデオ事業部への異動が下った。
加賀谷は本社からの増員と大規模なリストラ命令を受けるが、リストラを避ける方法を模索した。
加賀谷は次長の大久保修(渡辺謙)に架空の売り上げ計画を作らせ、開発者に営業活動を行う移動を行った。
加賀谷は4名の開発者を選び、家庭用VTR開発極秘のプロジェクトを始めた。
本社に隠したプロジェクトで、試作品を「VHS」と命名した。
ところが、ソニーがベータマックスを発表した。
ビデオ事業部は遅れを取るが録画時間が長く、彼らはVHSに夢と希望を託した。
遂にベーターマックスを超える録画が可能な試作機が完成した。
加賀谷はこれからが勝負と言い、技術を公開して標準規格になる事を目指した。
しかし、通産省は既にベータマックスを国内規格として採用しようとしていた。
加賀谷と大久保は大阪へ向かい、加賀谷は途中で妻・圭子(真野響子)が脳梗塞で倒れた事を知ったが、親会社の松下電器相談役・松下幸之助(仲代達矢)にVHS方式の採用を直訴して評価を得た。
通産省から期日以後の新規格の発売禁止が通達されるが、社長(夏八木勲)は発売を決心した。
3週間で発売にこぎ着け、松下も採用を決めた。
その後、加賀谷は脳梗塞の妻(真野響子)の世話のために、定年を前に退職を決めた。
最後に彼が工場を訪れた時、従業員たちはVHSの人文字で彼を送った。


監督:佐々部清
脚本:西岡琢也・佐々部清
原作:佐藤正明
出演:西田敏行・渡辺謙・真野響子・緒形直人・篠原涼子・中村育二・石橋蓮司・倍賞美津子・江守徹・夏八木勲・津嘉山正種・國村隼・井川比佐志・仲代達矢
製作年:2002年


感想: 実際のドキュメントを原作とし、モデルもいる。
日本発の世界規格誕生の話だ。
技術開発は出来ても、商品化が難しい経済不況の元で、どれだけ技術者達が夢を持ち続けられるかは、日々難しくなっているが、その夢と同時に難しさをも知らせる内容になった。
主人公の家庭・家族も併行して描かれる、妻はやや理想的か?。
(2012/03/04)

疑惑

昭和56年7月11日、富山県埠頭で車が海中に転落し、地元の酒造店社長・白河福太郎(仲谷昇)が死亡したが、後妻の白河球磨子(桃井かおり)は助かった。
北陸日報の秋谷(柄本明)は、犯罪の可能性を前提に調べ始めた。
富山署は新聞による世論と自身の見込みで、殺人と信じた。
球磨子は前科4犯で、夫は3億円の保険金がかかっていた。
富山署や北陸日報の秋谷は、球磨子の過去の仲間の豊崎(鹿賀丈史)に事情を聞いた。
自動車の鑑定等から、物的証拠がないまま球磨子は逮捕された。
球磨子は白河家顧問弁護士の原山正雄(松村達雄)に弁護を依頼し、原山は東京の花形弁護士・岡村謙孝(丹波哲郎)に弁護を依頼したが岡村は断った。
公判の冒頭で、原山も健康を理由に辞退した。
そして佐原律子(岩下志麻)が国選弁護人として選ばれた。
律子は夫と別れて、月1回娘と出会っていた。
検察の起訴内容は殺人であり、目撃者(森田健作)は運転者は球磨子と証言した。
東京のクラブ主(山田五十鈴)の福太郎と球磨子の出会い・白河酒造専務(名古屋章)・福太郎の釣り仲間(三木のり平)らの証言は、状況証言だったが、球磨子の態度は状況を悪くした。
豊崎(鹿賀丈史)は、事件前に球磨子と会った内容を証言するが、有罪と思っていたので曖昧さがあった。
車の転落再現実験が行われたが、鑑定結果の可能性を広げるもので、傷や靴やスパナの存在を説明までは出来なかった。
<以下、隠し字>
豊崎が、律子を訪れ事情を話し、偽証証言を変えた。
律子は自身の偶然の車事故から靴とスパナの存在に仮説を持った。
律子は、福太郎の息子の宗春に出会い、事件の前日に福太郎と会った事を知って、証言を求めた。 裁判は意外な展開をした。


監督:野村芳太郎
脚本:松本清張・野村芳太郎・古田求
原作:松本清張
出演:桃井かおり・岩下志麻・柄本明・山田五十鈴・三木のり平・仲谷昇・丹波哲郎
製作年:1982年

感想: 社会悪を描こうとした原作者の意志は、被告人に向けたものか、警察・検察に向けたものか、鑑定に向けたものか、報道に向けたものだったのだろうか。
あるいは、弁護を避けた二人の弁護士も同様だろうか。
状況証拠や報道の危険性や、被告人の生き方にも疑問が投げかけられている。
佐原弁護士の周囲の事情が何故に描かれているかは、謎に思えた。
登場人物の殆どが喫煙している様子は、時代の経過を感じた。
(2012/03/10)

悪霊島

1980年ジョン・レノン暗殺のTVを見て、三津木五郎(古尾谷雅人)は1967年を思い出していた。
大学卒業ばかりの五郎はヒッピー姿で放浪中、瀬戸内海の刑部島で金田一耕助(鹿賀丈史)と出会った。
金田一は、その島出身でアメリカ帰りの億万長者・越智竜平(伊丹十三)の依頼で人探しに来ていた。
海で仮死状態の男が、「あの島には悪霊がとりついている、鵺の鳴く夜は気をつけろ、骨で繋がった子供・・」等の言葉を残し死んだ。
金田一は別の事件で来ていた磯川警部(室田日出男)と出会い、死んだ男が金田一の探している男と同一と聞いた。
磯川は浅井はる(原泉)という市子(いたこの様なもの)でもぐりの産婆の殺人事件で来ていた。
事件の前に磯川は、はるから手紙で20年以上昔に取り上げた赤ん坊で恐喝をしていたが、今は誰かに狙われていると書いていた。
はる殺しの目撃者は、ヒッピィ風の男を見たと言った。
祭礼で人の集まる刑部島へ渡った金田一は、島の実力者・刑部大膳(佐分利信)の経営する宿に泊った。
大膳は、昔に相愛の仲だった刑部神社の娘・巴(現巴御寮人)(岩下志麻)と竜平の仲を離し、守衛(中尾彬)と結婚させた。
巴にはふぶき(岩下志麻)という双生児の姉がいるが、脳障害で離れに住んでいた。
巴には双生児の真帆(岸本加世子)、片帆(岸本加世子)の娘がいて、大膳の広島と尾道にいる第2(二宮さよ子)・第3夫人(宮下順子)の元で育てられていた。
金田一が探していた男は、島にレジャーランド建設を目指す竜平の派遣した男だった。
村長らが竜平が寄贈した金の矢を持って帰り、翌日に竜平が帰島した。
島では10年前や5年前に蒸発した男を捜す者がいた。
祭りの夜に巴の婿の守衛が黄金の矢で胸を刺されて死に、そして片帆も絞殺死体で見つかった。
はる殺しの目撃者の見た男が五郎と判り、守衛殺しの疑いも生じた。
五郎の話では、「自分は貰われ子であり、はるによって取り上げられた、はるの手帳に、同じ年に巴が子供を生んでいたので、母親かと思い再度はるを訪ねて殺されているのを見た」といった。
20数年前巴は、はるの所で竜平の子を産んでいた。
20数年前、竜平と巴は鵺の鳴き声を合図に会っていた。
<以下、隠し字>
五郎の自供で五郎は事後従犯で、守衛の殺人犯はふぶきと断定されたが、金田一は納得出来なかった。
ふぶきが若い頃に過した広島で金田一は、原爆で死んだらしいことをつきとめた。
島に戻った金田一は磯川にふぶきは二重人格になった巴を隠すための架空と言った。
大膳を本当の刑部神社のある洞窟に追った金田一は腰の繋がった双生児の骸骨を見た。
巴が産んだ竜平の子で、同時に狂った巴が抱きその秘密を守るため殺された男たちの骨が多くあった。


監督:篠田正浩
脚本:清水邦夫
原作:横溝正史
出演:鹿賀丈史・古尾谷雅人・岩下志麻・岸本加世子・伊丹十三・中島ゆたか・室田日出男・二宮さよ子・佐分利信・宮下順子
製作年:1981年

感想: 巨匠・横溝正史の最後の作品が本格の超長編である事が驚きだ。
1980年の二重構造は別にしても、過去と現在との事件を結び、1967年現在の複数の事件が全て繋がる事を導いた。
小道具は横溝が過去に使用したものが殆どだが、微妙な伏線がばらまくように張られていて、かなりのミステリマニアでもいくつかは見落とすだろう。
高齢の巨匠の力を示した。
長い原作を、2時間に見事に入れ込んだ映像も密度の高い作品と言える。
(2012/03/16)

ジーン・ワルツ

珍しい症状の帝王切開医療過誤逮捕事件で三枝久広(大森南朋)が逮捕された。
産婦人科医で遺伝子治療研究を行う帝華大学医学部助教の曽根崎理恵(菅野美穂)は、産科医院・マリアクリニックでも診察を行っていた。
マリアクリニックは、院長・三枝茉莉亜(浅丘ルリ子)のガン発症と茉莉亜の息子・久広の事件で閉鎖まぎわで、理恵は院長代理で看護婦(濱田マリ)と診察を行っており、最後の4人の患者が定期的に通っていた。
胎児の生命維持が出来ない「無脳症」の27歳の甘利みね子(白石美帆)、未婚で妊娠し中絶を望む20歳の青井ユミ(桐谷美玲)、長年にわたる不妊治療の末に妊娠をした39歳の荒木浩子(南果歩)と夫(大杉漣)、顕微授精により双子を妊娠している55歳の山咲みどり(風吹ジュン)だった。
授業で体外人工受精や代理母出産の必要性を解く理恵は、上司・屋敷教授(西村雅彦)からは注意人物とされ、准教授・清川吾郎(田辺誠一)は理恵を組織内改革を訴え諭した上で、かばった。
理恵・清川・三枝久広は、マリアクリニックで共に医学を学んだ仲間だった。
教授を目指す清川は、理恵に女性として感情を持つが、主張・言動にはとまどった。
甘利みね子は夫と共に中絶を決め、生まれた子供は5分後に死んだ。
青井ユミは甘利みね子が産み直ぐに死んだ子供の写真を見て、子供を産む決心をした。
理恵も別れた夫や、清川との過去に悩みがあった。
山咲みどりは、実は理恵の母親で代理母であり、子供は理恵のだった。
マリアクリニックに、ジャーナリスト田中美紀(片瀬那奈)が度々理恵を訪ねて来た。
理恵が日本では認められていない代理母出産を進めている噂が出始め、清川は調べ始めたが、理恵は大学に辞表を提出した。
理恵がマスコミに、「出産希望者は全て受け入れる」ニューマリアクリニックを作る構想で取り上げられた。
<以下、隠し字>

部落で美佐子の死体を見て逆上した味沢は、自分の娘を殺そうとしていた長井孫市を殺したのだ。
朋子は編集の浦川隆(田村高廣)と大場の暴露記事を載せようとするが阻止され、朋子は成明(舘ひろし)に殺された。
町を出ようとした味沢と頼子は成明(舘ひろし)たちに襲われ、戦う味沢を見て頼子は「お父さんを殺したのはこの人!」と言った。
北野刑事は味沢を逮捕して連れて帰ろうとしたが、味沢を監視していた自衛隊特殊工作隊・渡会(原田大二郎)が阻止した。
渡会は3人を自衛隊の演習地に連み、演習にまぎれて消そうとした。


監督:大谷健太郎
脚本:林民夫
原作:海堂尊
出演:菅野美穂・田辺誠一・大森南朋・南果歩・白石美帆・桐谷美玲・須賀貴匡・濱田マリ・大杉漣・西村雅彦・浅丘ルリ子
製作年:2011年

感想: 産科医療の問題と現状を描く、直ぐに医療ミスとする傾向が急患の受け入れ拒否になり悪循環している。
理想を求める理恵と、現実の中で改革を目指す清川との絡みがあり、互いに理解しながら異なる道へ行く。
理恵は密かに認められていない代理母出産を行うがそれは何を意味するのか。
問題点を、サスペンス展開で進めます。
(2012/03/22)

どら平太

或る小藩。(オープニングバック)
町奉行が辞職を繰り返していて、新任が日を過ぎても出仕しなかった。
江戸から望月小平太(役所広司)が新任で来るが、振る舞いの不埒さ・悪行から「どら平太」という渾名が広まっており、友人の安川(片岡鶴太郎)が小平太に注意すると、本人が友人の大目付の仙波義十郎(宇崎竜童)に流させた悪評であった。
正木等の若者が不満を持ち、城代家老(大滝秀治)ら重役も不審で評定に呼んだ。
小平太は密輸・売春・賭博・殺傷に満ちた「壕外」と呼ばれる地域の浄化にきたのだ。
安川の馴染みのじい(江戸家猫八)の家に泊まり、壕外に潜入して利権を分け合っている3人の親分の存在を知った。
じいの家に江戸から芸者・こせい(浅野ゆう子)が追ってきて連れ帰ろうとしたので、小平太は仙波の隠れ家に移ったが、行動がもれている様だった。
売春を仕切る巴の太十(石倉三郎)と兄弟分になり、次に賭博を仕切る継町の才兵衛(石橋蓮司)とも兄弟分になった。
こせいは、小平太を探しに壕外に行き、偶然に抜け荷を見つけ殺されれかけるが、小平太に助けられた。
密輸業を仕切る大河岸の灘八(菅原文太)は決着を作るため小平太を呼び出すが、50人斬りにあい観念した。
<以下、隠し字>

小平太が奉行として示した罪状は、死罪ではなく永代当地追放であり、重役との取引の証拠を作らせた。
重職たちを退陣させた小平太は、重職たちと3人の親分の間にいるもうひとりの人物に切腹させた。
小平太は一度も奉行所に姿を現さないまま辞職した。


監督:市川崑
脚本:黒澤明・木下恵介・市川崑・小林正樹
原作:山本周五郎
出演:役所広司・浅野ゆう子・宇崎竜童・片岡鶴太郎・菅原文太・石橋蓮司・石倉三郎・本田博太郎・岸田今日子
製作年:2000年

感想: 気分は遠山金さんをはじめとする隠密奉行です。
小平太が、奇想天外な方法で複雑な人物そろいの中で、藩に存在する悪を追放する。
痛快時代劇だが、細部まで練られている。
(2012/03/28)

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