鑑賞日記(2012/02)
- 草の乱
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1918年、北海道野付牛町で老人(緒形直人)が、妻(田中好子)と長男に話した。
本当の名は、井上伝蔵で死刑判決を受け、逮捕を逃れ北海道へ逃げて来て以来33年、伊藤房次郎として生きてきた。
隠してきた半生を静かに語った。
1883年、秩父郡下吉田村では、蚕を飼い生糸を売って暮らしていた。
生糸価格の暴落、軍備拡張の増税、世界的不況での生糸輸出激減で農民は生活出来なくなっていた。
人々は借金に頼り、高利の取り立てに身代限りが続出した。
生糸商家「丸井」を営む井上伝蔵(緒形直人)は妻(藤谷美紀)と結婚していたが、人々の窮状に悩んだ。
高岸善吉(田中実)、落合寅市(安藤一夫)、坂本宗作(神山兼三)の3人も、また困窮し、不当な高利貸しの取締まりを役所に請願するも、無視された。
自由民権運動が秩父でも起こり「自由党」の演説大会が開かれた。
困窮、不平等の元凶は政府にあるという発言に賛同して入党者が増えた。
善吉らは、高利貸し取締まり・借金年賦返済の請願を始めて、伝蔵も賛同した。
秩父各地で集会を開き賛同者を増やし、加藤織平(杉本哲太)を副総理、田代栄助(林隆三)を総理として「困民党」を作った。
警察署と高利貸しへ請願・交渉を度々行なったが断られ、高利貸しと裁判所の贈収賄の事実も明るみとなった。
集った困民党幹部は、武装蜂起を決意したが、準備不足でも始めざるを得なくなった。
1884年11月1日、秩父郡下吉田村に、竹槍・刀・鉄砲などで武装した民衆3千余が結集して高利貸しの家を襲った。
集団を集め田代栄助が困民党の役割を読み上げ出陣を命じた。
<以下、隠し字>
大宮郷まで進出して高利貸しを全て襲った後で、次の行動で意見が分かれた。
警察は、本部の憲兵の応援を依頼した。
裏切りが出て、勝手な進軍があり集団は乱れた。
田代は失敗を悟り、井上に逃亡を望んだ。
井上らの不明者を含め幹部に死刑判決が出た。
そして、井上伝蔵は・・・・。
監督:神山征二郎
脚本:加藤伸代
出演:緒形直人・藤谷美紀・杉本哲太・田中好子・田中実・安藤一夫・林隆三
製作年:2004年
感想:秩父事件発生120年記念の文化庁参加のドキュメンタリー的な記録を中心にした内容です。
当時は政府も、自由を訴えた自由党も無責任で乱れていた。
歴史的に代表的な、農民の決起事件だが抑えられた、その記録です。
(2012/02/03)
- 猿ロック THE MOVIE
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銀行強盗が人質をとり立てこもり、水樹警察署長(小西真奈美)は自ら人質になり交渉に当たった。
「サル」こと猿丸耶太郎(市原隼人)は、下町の商店街に暮らす天才鍵師だが、弱点は女に目がないことだった。
「サル」は幼馴染みの刑事・山田(高岡蒼甫)の依頼で銀行裏口の鍵を開け、表面的には事件は解決した。
その後、篠崎マユミ(比嘉愛未)と言う女が来て鍵を開ける依頼をした、彼女は記憶障害で番号を忘れたといった。
勤務先のスポーツクラブの金庫を開けるとトランクがあった。
マユミはそれを持ち出そうとするが、すぐにヤクザに追われ「サル」は訳のわからないまま逃げ出し、マユミを守ると約束した。
しかし同時に、警察からも指名手配を受けた。
トランクに、大金と警察の重要情報が有るらしく、異なる思惑で追われた。
最後にマユミは、「サル」を置いてトランクを持って逃げたが、ヤクザに捕まった。
「サル」と姉(芦名星)と山本(渡部豪太)は、マユミ救出に向かった。
そこで、ヤクザと警察とその中の権力争いに巻き込まれた。
<以下、隠し字>
「サル」はマユミを信じたが、助けられたマユミはトランクを持って再度逃げた。
鍵師の掟を破ったと廃業しようとする「サル」にマユミから手紙が届いた。
監督:前田哲
脚本:長谷川隆
原作:芹沢直樹
出演:市原隼人・比嘉愛未・高岡蒼甫・芦名星・渡部豪太・和田聰宏・光石研・西村雅彦・國村隼・小西真奈美
製作年:2010年感想: 実写では、かなり無理な設定が多く映像化は矛盾を無視して展開を楽しむ事になっているようだ。
鍵師のテクニックより逃走方法の設定が面白い。
抗争の仕組みは、やや甘いが、解決しない謎も残る。
(2012/02/09)
- 死に花
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膨大な入居費の老人ホーム「らくらく長寿園」に、井上和子(星野真里)が赴任した。
老人達は、何かする事で生きる目的を探していた。
青木老人(森繁久彌)の白寿祝いが行われ、長く生きる事の意味を皆考えた。
源田金造(藤岡琢也)は計画好きで、棺桶や骨箱を自分で用意した。
菊島真(山崎努)は元映画プロデューサーで、親友の未亡人・明日香鈴子(松原智恵子)も同じホームにおり、二人の間はもう一歩の恋人だった。
源田が死んだが葬儀は、生前に源田が企画した通りのジャズスタイルだった。
骨に焼き終わると、睡眠剤を飲み同時に焼かれたらしい未亡人(加藤治子)も見つかった。
菊島への源田の遺品は、銀行の地下に穴を掘り、金を強奪すると言う計画の「死に花」というノートだった。
鈴子に見せると、ホーム仲間の穴池(青島幸男)・庄司(谷啓)・伊能(宇津井健)に見せており計画を実行に移すことになった。
狙いは、伊能のかつての勤め先であるサクランボ銀行であり、道具も準備したが穴掘りの拠点に住むホームレスの先山(長門勇)も仲間になった。
銀行が合併で閉鎖になる事で、一ヶ月間の時間のみになった。
井上和子は偶然に穴池を見つけ、計画を知り呆れると共に仲間になった。
途中で、防空壕の跡にたどり付き白骨化遺体を見つけたが、金庫の真下まで掘り進めた。金庫を破る前日に、台風により川沿いの穴の入り口から水が入り水没した。
<以下、隠し字>
しかし、浸水で地盤が弱くなりビルが傾き始めた。
菊島たちは傾いたビルの下に穴を掘りはじめ倒れる直前に17億3千万円を得た。
後日、防空壕から発見された写真の鮮明化で遺体が青木の妻子のものだと判明した。
計画が源田による青木の為の防空壕探しと気づいた。
鈴子は、奪った金を元手に武田信玄の埋蔵金探しを提案し皆乗り気になった。
その時、菊島にボケの症状が顕れていた。
監督:犬童一心
脚本:小林弘利・犬童一心
原作:太田蘭三
出演:山崎努・青島幸男・谷啓・宇津井健・長門勇・藤岡琢也・松原智恵子・星野真里・森繁久彌
製作年:2004年感想: コメディタッチの銀行強盗計画です。
老後とは何かと、いつもひと花咲かせたい気持が起こす不思議な話です。
2004年制作ですが、5年後に見ると多くの物故者に驚きます。
あるいは、本当に死に花だったかのような生き生きした姿です。
(2012/02/15)
- 野性の証明
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自衛隊特殊工作隊が密かに結成されて過酷な訓練をしていた。
過激派の人質の米国大使を自衛隊特殊工作隊が救った。
味沢岳史(高倉健)は特に優秀な隊員だった。
未知の土地にひとりで置き去り乏しい食料で、一般人との接触をせずに目的地に向かう訓練は、最も過酷だった。
味沢が東北山中のその訓練中に飢えと疲労の極限で、旅行中の越智美佐子(中野良子)に出会った。
彼女は救助を求めて集落へおりたが、そこで大量虐殺事件が発生した。
村人と美佐子が惨殺され、捜査の北野刑事(夏木勲)は、美佐子は巻添えと断定した。
唯一の生存者は、13歳の長井頼子(薬師丸ひろ子)だけだったが、恐怖で記憶喪失になっていた。
頼子の父・長井孫市(江角英明)がウイルスに冒された野菜を食べて精神異常になったとされた。
年が過ぎて、味沢は除隊して羽代市で保険外交員をして、記憶を失った長井頼子を養女にして暮らしていた。
羽代新報の記者、越智朋子(中野良子)は交通事故の現場で、車の中に同僚の立川の死体を見、相手の死体が見つからないが警察はホステスの明美と立川の酒酔運転の事故とした。
羽代市は大場総業会長大場一成(三國連太郎)に支配され、立川はその不正を暴露しようとしており、朋子は事故とは思わなかった。
明美には保険がかけられており、味沢は大場の忠臣の中戸組の幹部の夫・井崎(梅宮辰夫)と一週間前に保険の契約を済したばかりだった。
事故現場で味沢は、美佐子にそっくりの妹の越智朋子と話した。
保険金支払いの責任を負わされた味沢は事件の調査を始めた。
味沢は立川の死亡を疑う朋子が暴走族に襲われていたのを救い、二人は近づいた。
暴走族のボスは大場の長男・成明(舘ひろし)であった。
事故車から提防のコンクリート片を見つけた味沢は、朋子と共に中戸組の提防工事現場で明美の死体を見つけたが、井崎の単独犯行とされた。
一方、北野刑事は、大量殺人の犯人は頼子の父との結論に納得せず味沢を追っていた。
不思議な予知能力を発揮し始めた頼子を専門医に診せて、その底に自分への憎しみがあることを知った味沢は、時が来たと思い、朋子と共に頼子を事件の村に連れて行った。
頼子は少しずつ記憶を取り戻しつつあり、味沢は朋子にすべてを語った。
<以下、隠し字>
部落で美佐子の死体を見て逆上した味沢は、自分の娘を殺そうとしていた長井孫市を殺したのだ。
朋子は編集の浦川隆(田村高廣)と大場の暴露記事を載せようとするが阻止され、朋子は成明(舘ひろし)に殺された。
町を出ようとした味沢と頼子は成明(舘ひろし)たちに襲われ、戦う味沢を見て頼子は「お父さんを殺したのはこの人!」と言った。
北野刑事は味沢を逮捕して連れて帰ろうとしたが、味沢を監視していた自衛隊特殊工作隊・渡会(原田大二郎)が阻止した。
渡会は3人を自衛隊の演習地に連み、演習にまぎれて消そうとした。
監督:佐藤純彌
脚本:高田宏治
原作:森村誠一
出演:高倉健・薬師丸ひろ子・中野良子・夏木勲・三國連太郎・舘ひろし・田村高廣・ハナ肇・松方弘樹・丹波哲郎
製作年:1978年感想: 森村誠一は、横溝正史を代表とするスタイルと松本清張らのスタイルを含めたミステリを目指した。
証明3部作はそれぞれ、それにもうひとつの要素を加えているシリーズです。
野生の証明は、あえて言えばハードボイルドの要素でしょう。
予知能力や自衛隊特殊工作隊という構想か奇想かという要素もあります。
(2012/02/21)
- 上意討ち・拝領妻始末
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会津松平藩馬廻りの三百石藩士笹原伊三郎(三船敏郎)は、主君松平正容(松村達雄)の側室・お市の方(司葉子)を、長男与五郎(加藤剛)の妻に拝領せよと命ぜられた。
武芸一筋の伊三郎は、笹原家に婿養子で入り、勝気な妻・すが(大塚道子)に我慢して暮してきたので、与五郎には自分と同じ苦労をさせたくなかった。
お市の方は、主君を殴ったと言われていた。
伊三郎は親友で国廻り支配の浅野帯刀(仲代達矢)とも相談し、話を断ろうとした。
しかし、すがや次男の事なかれ主義と、側門人・高橋外記(神山繁)の強引な要請と、笹原一族の頭領・笹原監物(佐々木孝丸)の談判と藩命という力の前に屈した。
間もなく与五郎と市の祝言があり、市は夫や姑に従順に仕えた。
家督を与五郎に譲った伊三郎は、市がなぜ藩主から追い出されたか判らなかった。
与五郎が市から聞いた話では、市は十九歳で許嫁がいたが藩命で正容の側室にされて菊千代を生んだ。
周囲の重い悩みで子を産んだ市は、喜々とした新しい側室のお玉の方(小林哲子)を見て、玉と正容に逆上したのであった。
与五郎も伊三郎もこれを聞き、市ほど立派な嫁はいないと思った。
平和な日が続き、市はとみを生んだ。
ある日、正容の嫡子正甫が江戸で急死した。
菊千代が世継ぎと決り、市の立場は世継ぎの母となり藩の重臣は与五郎に市を返上せよと命じた。
この都合による処置に伊三郎は怒り、これまで笹原家を守るため生きてきた伊三郎は、与五郎と共に上意にそむく決心をした。
笹原一族は全て反対で、謀り事で市を奪ったが、ふたりの決心は変わらなかった。
側門人・高橋外記(神山繁)の上意討ちの一隊が笹原家を襲い、連れられて来た市は自害し、与五郎も市のそばで討ち死にした。
伊三郎は外記らを斬り、藩の非道を幕府に訴える為にとみと旅に出るが、伊三郎の前に領内の出入りを見張る帯刀が現われた。
伊三郎と戦った帯刀は、伊三郎に敗れたが、その伊三郎も追手の銃弾によって死んだ。
監督:小林正樹
脚本:橋本忍
原作:滝口康彦
出演:三船敏郎・加藤剛・司葉子・仲代達矢・松村達雄・江原達怡・大塚道子
製作年:1967年感想: モノクロ時代の作品だが、時代劇には向いている気もする。
武家の家と、重臣の勝手な行動に何度も人生を狂わされるが、最後はその愛を貫く夫婦に我慢の生活を続けていた男が立ち上がる。
周囲の都合についには、自分達の思いを貫く。
(2012/02/27)