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鑑賞日記(2011/10)

かもめ食堂

フィンランドのヘルシンキに、「かもめ食堂」という小さな食堂をオープンした日本人女性サチエ(小林聡美)だが開店1ヶ月は誰もこない。
メインは、おにぎりと日本食だった。
最初の客は日本アニメおたく青年で、ガッチャマンの歌詞を聞かれるが思い出せない。
本屋でミドリ(片桐はいり)を見てガッチャマンの歌詞を聞くと、完全に憶えていた。
ミドリは、適当に旅行先を決めたらフィンランドだったという。
サチエは、ミドリを自分の家に泊めたが、その内にミドリは食堂を手伝う。
ある男性がコーヒーを飲み、もっとおいしくする方法をサチエに教える。
ミドリは、食堂の客が増える方法を考えるが成功しない。
サチエは、日本とフィンランドの食事の共通に鮭があると思っていた。
サチエは、ミドリとの会話中にシナモンケーキを作って見たくなる。
そのシナモンケーキの匂いで客が来た。
両親の介護を終えたマサコがフィンランドに来て、荷物を紛失して待っている間に食堂を訪れる。
同時に夫に逃げられてノイローゼ気味の女性も訪れる。
酔ったその女性を、マサコは優しく介護する。
マサコも食堂を手伝う事になる、ぼんやり暮らすのが難しいと言う。
休日に4人で出かけて、食堂に戻るとコーヒーの入れ方を教えた男が侵入して、道具を持ち出そうとしていた。
食堂の前の持ち主で、残した道具を取りに来た。
サチエは、おにぎりを作りみんなで食べる。
食堂の客は増えて行くが、マサコの荷物もようやく見つかる。
サチエたちは、マサコは帰ると思うが荷物がイメージと違うと言い、残る。
その内に、ついに食堂が満席になる日が来た。


監督:荻上直子
脚本:荻上直子
原作:群ようこ
出演:小林聡美・片桐はいり・もたいまさこ
製作年:2005年


感想: 日本人女優は3人だけという、ストーリー性の薄いのんびりした作品です。
その雰囲気は、舞台がフィンランドであり、日本人が主人公だけという事と無関係ではないだろう。
外国で日本食食堂を開いたが客はこない、のんびり対応していたらいつの間にか満席になったという概略です。
何故とか、アイデアが成功をもたらす話とは違う、どこかゆったりした作品なのです。
(2011/10/06)

ディア・ドクター

山奥の過疎の村で、医師が行方不明になり大騒ぎになっていた。
村民から信頼されていた医師で警察(松重豊・岩松了)も調べ始めた。
数年前に無医村に着任して、村人から信頼を寄せられている医師の伊野治(笑福亭鶴瓶)であった。
3ヶ月前に東京の医大卒業の・相馬啓介(瑛太)が研修医として来た。
村民とのコミュニケーションを優先する都会では見られない方法で接する伊野に驚くが、過疎地の現実を次第に理解しはじめた。
看護士の朱美(余貴美子)も伊野を理解していた。
医療メーカーの販売員(香川照之)も微妙な関係であった。
ある日、一人暮らしの未亡人鳥飼かづ子(八千草薫)を診療した伊野は、都会で医師をしている娘に気づかれないように一緒に嘘をついてほしいと頼まれた。
病状の悪化に気づき悩むが約束を守る伊野だった。
相馬は、研修後も地方医療に残りたいというが、伊野は見えているのは嘘だといった。
かづ子の娘の医師(井川遥)が訪問してきたが一度は嘘を突き通した。
しかし、「次にかづ子を見舞うのが1年後」と聞いて、伊野はでかけ遠くからかづ子に挨拶し、医療メーカーの販売員に本当の病状を書いたものを渡して、姿を消した。
信頼を寄せられている医師の伊野の失踪を調べると、警察は医師免許を持っていない事を知った。
行方を追うが、誰も信じなく訴えようともしなかった。
かづ子は娘の病院に移り、相馬は赴任した。
そして、伊野が現れた場所は・・・。


監督:西川美和
脚本:西川美和
原作:西川美和
出演:笑福亭鶴瓶・瑛太・余貴美子・井川遥・松重豊・岩松了・香川照之・八千草薫
製作年:2009年

感想: 過疎の村の医師として村民から絶大な信頼を受けていた医師が、大きな嘘を持っていた。
そこに、患者に頼まれてもう一つの嘘をつくのだが、とうとうそれを明かして姿を消す。同時に元の大きな嘘も判る。
しかし、患者が医師へ行く都会と異なる、過疎地での医療に専念していた偽医者に村民は信頼しており、誰も非難しない。
過疎地の医療とはどのようなものだろうかを問う。
(2011/10/12)

化粧師 KEWAISHI

大正初め、東京の化粧師・小三馬(椎名桔平)に天ぷら屋(田中邦衛・柴田理恵)の娘・青野純江(菅野美穂)が弟子にしてと言うが取り合わない。
呉服屋の夫人・三津森鶴子(いしだあゆみ)や、女優には小三馬は人気があった。
写真館(佐野史郎)からも引き合いがあった。
鶴子の下働きをする文盲の時子(池脇千鶴)が字を覚えようとした時、小三馬は力になる。
女優を目指す中津小夜(柴咲コウ)は、化粧の後に小三馬に、心に化粧をしなければならないといわれる。
時子は、字を憶えて貧しい子どもに、物語を読み聞かす。
しかし、お上の立ち退き命令が出る。
時子は、立ち退き命令書を奪い逃げて追われる。
小三馬に助けを求め、小三馬は変装させて逃がす。
<以下、隠し字>
純江は、化粧師になる事を諦め結婚を決めて、記念写真を小三馬の化粧で撮る。
その後、警察が来て小三馬を呼び止めるが気がつかない。
純江は警察に小三馬は、耳が聞こえないという。
家を失って女優を目指す時子に、小三馬は化粧してオーディション用の記念写真を撮る。


監督:田中光敏
脚本:横田与志
原作:石ノ森章太郎
出演:椎名桔平・菅野美穂・池脇千鶴・いしだあゆみ・田中邦衛・柴田理恵・佐野史郎・柴田理恵・柴咲コウ
製作年:2001年

感想: まだ化粧が一般的でない時代の職業です。
外見は変えても、心は自分で変えるしかないと伝える小三馬。
用具・材料・着物・着付けなど全てを行うので、今の化粧とは異なります。
誰もが夢を追いかけ、色々な挫折に出会った時代が、じっくりと描かれています。
(2011/10/18)

その木戸を通って

娘ゆかの婚礼の日に、平松正四郎(中井貴一)は17年前に突然姿を消した妻・ふさ(浅野ゆう子)のことを憶い出していた。
その昔、正四郎は御勘定監査のため、数日城中にいた。
廃家の名門平松家を継いだ上に、城代家老(神山繁)の娘との縁組も決まりつつあった。
縁談の仲立ちをした中老の田原権右衛門(フランキー堺)が正四郎を呼びつけ、留守宅の若い娘は誰かと尋ねた。
正四郎は帰宅後に娘と会うが憶えがない、女も正四郎を知らないと言う。
突然迷い込んできた記憶喪失の娘を哀れに思った家扶の吉塚助十郎(井川比佐志)とその妻むら(岸田今日子)は、娘の面倒をみたいという。
一度は雨の中に娘を追い出した正四郎だが、雨に打たれる娘の姿を見て心が変わり、家に連れ戻し面倒をみる。
娘はふさと名付けられ、その人柄ゆえに誰からも愛され正四郎も心惹かれる。
そして正四郎は自らの縁談を破談にし、ふさとの結婚を望む。
酒をあおりながら猛烈に反対する父・岩井勘解由(石坂浩二)だが、婚礼の日に父はふさに孫の顔を見せてくれと言う。
やがて、娘・ゆかが誕生した。
ある夜、ふさは取り憑かれたように庭を見て呟く、「これが、笹の道で、そしてこの向こうに木戸があって・・・・・。」そう言って倒れる。
しばらくして、ふさが突然に居なくなった。
正四郎は、庭の先からふさが戻って来そうに思った。
娘ゆかの婚礼の日に、元使用人からの手紙で、百姓屋へゆくがふさに似た別人だった。


監督:市川崑
脚本:中村努・市川崑
原作:山本周五郎
出演:浅野ゆう子・中井貴一・フランキー堺・井川比佐志・岸田今日子
製作年:1993年

感想: 原題は、「FUSA」
初期のハイビジョン・ドラマとして制作されて劇場未公開であった作品です。
監督死後に15年振りに公開されました。
今ではやや短めの92分ですが、現在の作品ではラストに多い斬り合いがないので、物語的には充分の内容です。
時代劇ですが、むしろ不思議な謎で始まり、謎で終わります。
(2011/10/24)

武士の一分

東北の海坂藩の三十石の下級武士・三村新之丞(木村拓哉)は、務めは藩主の毒見役であり、美しく気立てのいい妻の加世(檀れい)と幸せに暮らしていた。
ある日、新之丞は藩主に供されたつぶ貝の毒にあたって倒れた。
意識を失い高熱にうなされ、一命は無事だったが、新之丞は失明した。
親戚一同は会議で、加世に藩の有力者に頼みに行けと命じた。
加世は嫁入り前から顔見知りだった上級武士の島田藤弥(坂東三津五郎)が、力になると声をかけた事を思いだした。
城から、三村家の家名は存続し三十石の家禄もそのまま、という沙汰が下った。
しばらく後に、新之丞は加世のあとを下男・徳平(笹野高史)につけさせ加世の不審な行動を知った。
加世は自らの油断を恥じて全てを話した。
島田は家禄を口実にして加世の身体を弄び、その後も脅迫して肉体関係を強要した。
新之丞は、加世に離縁を言いわたし、盲目の身体で剣術の稽古を始めた。
剣の師匠・木部孫八郎(緒形拳)の協力を得て、新之丞の剣の勘は少し戻ってきた。
しかし、盲目では自らの死を受け入れる事が前提と言われた。
<以下、隠し字>
かつての同僚から、島田が家禄の口添えなどまったくしていなかったことを告げられ、騙されていた事を確認して島田に果たし合いを申し込む。
相討ちに近い形で、新之丞は島田の手を切り落とした。
島田は自害し、真相は拡がらなかった。
新之丞は徳平が下女として連れ帰ったのが加世と気づき、抱き合った。


監督:山田洋次
脚本:山田洋次・平松恵美子・山本一郎
原作:藤沢周平
出演:木村拓哉・檀れい・笹野高史・緒形拳・坂東三津五郎・小林稔侍
製作年:2006年

感想: 最後が果たし合いになる藤沢作品だが、後天性盲目だと現実感が薄い。
やむを得ないが、毒見の設定は面白い。
ただ、以降は平凡に流れすぎた感はあります。
あくまでも、個人の遺恨というのは武士の一分と言っても、どこにもある薄い内容になりがちの為と感じる。
(2011/10/30)

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